ベーチェット病は、口腔内アフタ、皮膚症状(結節性紅斑など)、眼症状(網膜ぶどう膜炎)および外陰部潰瘍を4主症状とする多臓器侵襲性の炎症性疾患であり、急性の眼炎症発作を繰り返すことにより失明の危険性もある難病である。インフリキシマブは2007年にベーチェット病の難治性ぶどう膜炎に対しての投与が承認され、既存の治療に抵抗性の重篤な眼発作に対して著明な発作抑制効果が示されている。しかしながら、インフリキシマブは本病を根治しているのではなく、病勢を抑制しているだけであり、投与を中止すると眼発作が再発することも示唆されており、インフリキシマブの離脱の基準に関しては全くわかっていない。したがって、本研究では、患者の背景や臨床経過およびインフリキシマブ血中濃度、インフリキシマブの中和抗体、感受性(リスク)遺伝子の有無を解析した上で、無作為にインフリキシマブを離脱してシクロスポリン内服へ変更する群とインフリキシマブを継続投与する群の2群に割り付けして、非盲検並行群間比較試験(RCT)を実施する。本RCTにより、患者背景やバイオマーカー、遺伝素因をもとにしたIFXの離脱基準を策定する。本研究へのエントリー基準は、インフリキシマブ治療にて過去2年間に眼炎症発作が起きていない臨床的寛解患者で20歳以上の成人とした。 令和元年度は、平成30年度に引き続き、エントリー基準を満たす患者において、無作為にインフリキシマブ離脱してシクロスポリンへ変更する群とインフリキシマブを継続投与する群の2群に割り付けして、非盲検並行群間比較試験を実施した。その後、研究期間内に得られた患者背景情報と臨床試験結果をもとに、IFXの①離脱可能群、②離脱慎重群、③離脱不可群等の離脱基準(性別、年齢、罹患期間などの患者背景、IFX血中濃度のカットオフ値、中和抗体の有無、保有している感受性遺伝子の種類と数)を検討した。
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