小中学校の視力検査は1979年以降ABCD判定のみで、近視の頻度は正確に把握されていない。小中学校全校生徒を対象とする臨床研究は同意を得られにくいという側面があるが、申請者らは京都府眼科学校医会、京都府・京都市教育委員会の協力のもとに、9年間にわたる近視の実態調査「詳しい視力検査」を継続中である。「詳しい視力検査」とは裸眼視力、眼鏡視力だけでなく、矯正視力、他覚的屈折度、眼軸長、角膜形状、高次収差などの測定も行うものである。測定の順序は以下のとおりである。イ)両眼開放オートレフラクトメーターで調節力をなるべく取り除いて屈折度測定。ロ)波面センサーを用いて角膜形状解析、角膜高次収差、眼球高次収差測定。ハ)視能訓練士による裸眼視力検査、矯正視力検査、自覚的屈折検査。ニ)非接触眼軸測定機器により眼軸長測定。本年度は凌風学園700人以上、夜久野小・中学校100人以上の生徒を限られた時間内に測定できた。この結果を解析することで近視進行のリスクファクターを発見し、国際近視学会で発表した。
強度近視が視機能障害をおこす原因は、眼球後部の形態異常である「後部ぶどう腫」に起因する。我々は後部ぶどう腫の存在する50人への詳しい病歴調査を行い、眼底写真や後眼部の光干渉断層撮影を用い、明らかな後部ぶどう腫の存在する目の70%が小学校入学以降に近視が発症していたことをあきらかにした。この結果は2019日本眼科学会で発表し、論文作成中である。
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