研究課題/領域番号 |
17K11434
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
林 孝彰 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (10297418)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 杆体一色覚 / 青錐体一色覚 / 錐体杆体ジストロフィ / 黄斑ジストロフィ / 全エクソン解析 / 次世代シークエンサ |
研究実績の概要 |
2015年に難病認定された広義黄斑ジストロフィは、一種の症候群で、杆体一色覚、青錐体一色覚、錐体ジストロフィ、錐体機能不全などが含まれ、その原因は多岐にわたり、原因となる遺伝子変異を特定することは困難であった。本研究は、錐体機能不全をきたす遺伝子網膜疾患に対し、次世代シークエンサを用いた全エクソーム法により、原因となる遺伝子変異を特定し、疾患表現型との関連性、ハプロタイプについて明らかにすることを目的とした。平成29年度は、以下の研究成果が得られた。 1. 眼底異常を伴わない杆体一色覚症例で、日本人症例では最初となるGNAT2遺伝子変異を報告した。補償光学装置を用いた錐体細胞の可視化に成功し、錐体密度および錐体構造が比較的保たれていることを明らかにした。 2. まれな眼底異常を伴わない錐体ジストロフィに対して、全エクソーム法により遺伝子変異の同定を試みた。その結果、1症例で日本では最初となるPOC1B遺伝子に両アレル変異を同定した。臨床像が同様な他の症例でもPOC1B遺伝子異常が示唆され、今後多数例での解析を予定している。 3. 女性のみが発症する錐体杆体ジストロフィの日本人1家系に対し、全エクソーム法により遺伝子解析を施行した。その結果、X染色体に存在するPRPS1に異常があることを捉えた。PRPS1変異はまた、難聴や視神経萎縮も合併する症例も存在し、症候性錐体杆体ジストロフィの原因である可能性が示唆された。日本で最初に発見された遺伝子異常であると同時に、その詳細な臨床像を明らかにした。 錐体機能不全を来す疾患、その原因遺伝子は多岐にわたる。臨床像と遺伝子型との関連性を明らかにすることは、疾患の自然経過、進行度、視機能予後予測など、将来の介入研究にむけ有意義な研究成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、杆体一色覚、青錐体一色覚、錐体ジストロフィを来す錐体機能不全に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチもしくは次世代シークエンサを用いた全エクソン解析により、原因となる遺伝子変異を特定し、表現型との関連性、ハプロタイプについて明らかにすることを目的としている。現在15家系以上の錐体機能不全の家系に対して遺伝子解析を行い、5-6家系でその原因を突き止めた。また、RPPH2遺伝子変異(p.C250G)を有する常染色体優性網膜色素変性の4家系におけるハプロタイプ解析では、その変異が欧米と異なる日本固有の創始者変異である可能性を突き止めた。現在、青錐体一色覚の4家系・4症例で、その原因を特定しつつある状況である。青錐体一色覚の原因も過去の欧米での報告とはことなる疾患メカニズムが存在することが明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き、杆体一色覚、青錐体一色覚、錐体ジストロフィを来す錐体機能不全に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチもしくは次世代シークエンサを用いた全エクソン解析を行い、遺伝子変異の同定、臨床像との関連性を明らかにし、その病態解明の成果を、発表論文としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当該年度の解析対象者が予想より若干下回ったことによる。また、今年度の解析に研究費を使用する予定である。
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