研究課題
2015年に難病認定された広義黄斑ジストロフィは、一種の症候群で、杆体1色覚、青錐体1色覚、錐体ジストロフィ、錐体機能不全などが含まれ、その原因は多岐にわたり、原因となる遺伝子変異を特定することは困難であった。本研究は、錐体機能不全をきたす遺伝子網膜疾患に対し、次世代シークエンサを用いた全エクソーム法により、原因となる遺伝子変異を特定し、疾患表現型との関連性、ハプロタイプについて明らかにすることを目的とした。平成30年度は、以下の研究成果が得られた。1. X連鎖若年網膜分離症は、男児の視力障害の原因として重要な疾患である。原因としてRS1遺伝子変異が主たる原因であり、米国では遺伝子治療の試みが行われている。今回、全国多施設共同研究で、56家系67症例に対してRS1遺伝子解析を行い、12の新規遺伝子を同定した。将来の遺伝子治療へ向けた重要な日本人コホートの報告となった。2. 眼底異常を伴わない錐体ジストロフィに対して、全エクソーム法によりPOC1B遺伝子変異を同定した。今回、多数例での解析を行い、新規遺伝子変異を同定した。POC1B遺伝子変異による錐体ジストロフィの臨床的特徴についても検討し、一部の周辺型錐体ジストロフィの原因になり得ることを明らかにした。遺伝子型と表現型の関連性について現在論文投稿中である。錐体機能不全を来す疾患、その原因遺伝子は多岐にわたる。臨床像と遺伝子型との関連性を明らかにすることは、疾患の自然経過、進行度、視機能予後予測など、将来の介入研究にむけ有意義な研究成果であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、杆体1色覚、青錐体1色覚、錐体ジストロフィを来す錐体機能不全に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチもしくは次世代シークエンサを用いた全エクソン解析により、原因となる遺伝子変異を特定し、表現型との関連性、ハプロタイプについて明らかにすることを目的としている。現在15家系以上の錐体機能不全の家系に対して遺伝子解析を行い、5-6家系でその原因を突き止めた。また、遺伝子治療対象疾患であるコロイデレミアの遺伝子解析を継続している。その原因遺伝子CHM異常によるコロイデレミアに対する遺伝子治療は、間もなく日本でも治験が行われる可能性がある。本研究は、その前段階としてまず、女性保因者の臨床像の特徴を検討した。その結果、CHM変異を有する保因者は特徴的な眼底所見を示すものの補償光学装置をもちいた解析で錐体細胞数・密度は健常者とどうように保たれていることを明らかにした。今後は、コロイデレミア(男性罹患者)のコホート研究を行い、将来の遺伝子治療に向け臨床的特徴を明らかにしていく予定である。青錐体一色覚の4家系・4症例で、その原因を特定しつつある状況である。青錐体一色覚の原因も過去の欧米での報告とはことなる疾患メカニズムが存在することが明らかになりつつある。
今後も引き続き、杆体1色覚、青錐体1色覚、錐体ジストロフィ(黄斑ジストロフィ含む)を来す錐体機能不全に対し、候補遺伝子の分子遺伝学的アプローチもしくは次世代シークエンサを用いた全エクソーム解析を行い、遺伝子変異の同定、臨床像との関連性を明らかにし、その病態解明の成果を、発表論文としてまとめていく予定である。将来の遺伝子治療研究へ向けた基盤研究と確信する。
購入を予定していたPCR関連試薬の購入費が少なく済んだため。また、学会参加費および旅費が不要であったため。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Ophthalmic Surgery, Lasers and Imaging Retina
巻: 50 ページ: 76~85
10.3928/23258160-20190129-03
Human Genome Variation
巻: 6 ページ: 6:3
10.1038/s41439-018-0034-6
American Journal of Ophthalmology Case Reports
巻: 13 ページ: 110~115
10.1016/j.ajoc.2018.12.019
Ophthalmic Genetics
巻: 39 ページ: 357~365
10.1080/13816810.2018.1459737
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 8279
10.1038/s41598-018-26524-z
巻: 8 ページ: 11507
10.1038/s41598-018-29891-9
巻: 8 ページ: 16733
10.1038/s41598-018-35152-6
あたらしい眼科
巻: 35 ページ: 437~445