研究課題/領域番号 |
17K11438
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
太田 浩一 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70262730)
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研究分担者 |
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
石原 裕一 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (50261011)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
2018年1月から12月の1年間に、松本歯科大学病院眼科に通院中の抗血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体内注射の治療を行っている加齢黄斑変性の患者157人(男性118人、女性39人)をサブタイプに分類した。診療録、カラー眼底写真、光干渉断層計、フルオレスセインおよびインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査の所見をもとに滲出型加齢黄斑変性をサブタイプに分類した。典型的加齢黄斑変性80人(51 %)、ポリープ状脈絡膜血管症66人(42 %)、網膜内血管腫状増殖8人(5 %)に分類できた。 並行して、加齢黄斑変性の患者および対照群として白内障患者の歯周病検査を行った。加齢黄斑変性患者の平均年齢は75.3歳で、対照群の72.1歳と統計的有意差はなかった。総歯数は加齢黄斑変性患者において23.3本、対照群において21.5本で統計的有意差はなかった。歯周病の評価の1指標となる平均probing depth (PD)は加齢黄斑変性患者で2.28 mm、対照群で2.3 mmで有意差がなかった。平均PD値で有意差が出なかったため、前歯と奥歯に分けて、評価した。前歯では加齢黄斑変性1.95 mm、対照群で2.04 mm、奥歯で加齢黄斑変性2.51 mm、対照群で2.79 mmで有意差がなかった。代表値として、最深部の長さを検討した。こちらも前歯では加齢黄斑変性3.25 mm、対照群で4.20 mm、奥歯で加齢黄斑変性4.33 mm、対照群で5.78 mmで両群間において差がなかった。 以上の検討を進める一方、加齢黄斑変性に関する論文が多いRetina誌の定期購読を継続し、情報収集をした。また、加齢黄斑変性に関する海外の最新の情報を得るために、欧州網膜会議に出席した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
松本歯科大学病院眼科に通院する加齢黄斑変性の患者を診療録、カラー眼底写真、光干渉断層計、フルオレスセインおよびインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査の所見よりドルーゼンのみの前駆病変、滲出型加齢黄斑変性、萎縮型加齢黄斑変性の診断をすすめている。滲出型加齢黄斑変性157人を典型加齢黄斑変性51%、ポリープ状脈絡膜血管症42%、網膜内血管腫状増殖5%のサブタイプに分類できた。 一方、歯周病の診断は2割程度にとどまっている。最大の理由は大学のある塩尻市内の患者は1割程度で患者の住所が遠い(病院から30km~50km)ため、頻回通院が大変である。眼科診察では診断のため、外来診察において、視力検査、眼圧検査、眼底写真、光干渉断層撮影の上、暗所での細隙灯検査と眼底検査が必要となる。さらに抗血管内皮増殖因子阻害薬の硝子体内治療時は 術前・術中・術後処置も必要となる。眼科外来での滞在時間が多く、同日の歯周病診察が負担となっている。また、高齢者が多く、視力障害が主な症状であり、院内および通院時の移動に伴う転倒等の危険を考えると歯周病診断を同一日に行うには患者負担が多くなる。実際、研究の説明をしても同意されない症例に時々直面する。また、歯周病だけの診察に別の日に来院することは遠方からの通院が多いため、同意されない場合もあり、研究対象者数が増えてこない。 また、加齢黄斑変性のサブタイプ分類と関連する遺伝子多型に関する解析は進んでいない。こちらは軽微ながら採血という侵襲を伴うため、歯周病診察が進行しない間はより、同意を得ることが難しい状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては眼科外来患者における滲出型加齢黄斑変性を典型加齢黄斑変性、ポリープ状脈絡膜血管症、網膜内血管腫状増殖のサブタイプへの分類は進んでいる。最終年度は滲出型加齢黄斑変性のほか、ドルーゼンのみの前駆病変および萎縮型加齢黄斑変性の診断を追加する。これは診療録、カラー眼底写真、光干渉断層計、フルオレスセインおよびインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査の所見があるので、継続的に診断を行うことは遂行可能である。 最終年度においてはより精力的に患者の歯周病診察へ地道な説明を継続的に行うことに尽きる。加齢黄斑変性診断に必要な視力検査、眼底写真、光干渉断層撮影、蛍光眼底造影検査、医師による診察の途中に本研究の必要性および具体的な方法を示した案内を行い、歯周病検査への理解を求める。または 眼科の検査(たとえば視力検査後に散瞳剤の点眼を行い、30分程経過してから眼底写真、光干渉断層計による撮影、医師による診察が行う)の合間に歯周病科に移動して歯周病診察を受けてもらうという対策がある。または眼科外来に本研究の目的・協力依頼を書いたポスターを掲示して、診察を待つ間に、啓蒙する対策がある。 もちろん、本研究においては松本歯科大学の「学術研究倫理指針」を尊重し、「松本歯科大学研究等倫理審査委員会」での承認を得ているが、被験者の募集に関しては、研究へ参加することは個人の自由意志であり、強制されるものでないこと、同意しなくても不利益は生じないこと、いったん同意した場合もいつでも同意を撤回できること、その場合は採取した研究用血液、結果は破棄されて、研究に使用されないこと、データは個人情報であり、厳重に管理され、個人識別情報(氏名、生年月日、患者ID等)とは分離し、施錠された部屋のキャビネットに厳重に保管されることなどを十分説明した上で、推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子多型の解析のための採血が予定より、遅れているため、遺伝子多型の解析が進まず、未使用額が生じた。研究最終年度である令和元年度は採血症例を増やし、遺伝子多型の解析のために使用予定である。
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