研究課題/領域番号 |
17K11439
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松本 長太 近畿大学, 医学部, 教授 (70229558)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 固視微動 / 視野検査 / 他覚的視野 / 両眼開放視野 / マイクロサッカード / ヘッドマウント型視野計 / imo / eye tracking |
研究実績の概要 |
現在眼科臨床において広く用いられている視野検査は、被検者が視標を検出した際にボタンを押して応答する自覚的な検査手法である。そのため被検者の応答特性が視野検査の精度と強く関連し、測定結果に変動を及ぼす大きな要因となっている。そのため被検者の応答に依存しない他覚的な視野検査法の確立が強く望まれている。他覚的な評価指標として過去に瞳孔反応や視覚誘発電位などが用いられているが、これらはノイズやダイナミックレンジなど様々な制約により未だ臨床への応用が困難である。 一方、固視微動は一点を注視した状態で観察される微小な眼球運動で、特に固視微動の構成成分の一つであるマイクロサッカードは、視覚刺激や視覚注意の移動により減少することが知られており、我々も予備実験で同様の現象を確認した。しかし予備実験で固視微動検出に使用した眼球運動計測装世アイマークレコーダーEMR-9はサンプリング周波数が240H,のため、高周波成分の固視微動を全て捉えることができない。そのため本研究ではサンプリング周波数が2000H,まで対応可能なEyeLink 1000 Plusを用いてより詳細な固視微動の検出を試みることを目的とした。EyeLink 1000 Plusは装置の規格上既存の視野計に搭載することが不可能なため、視標呈示モニター上に現行の視野検査と同様の検査条件を再現するプログラムを作成し、視野検査中に発生する固視微動を捉える実験環境を設定した。今後は正常被検者を対象に固視微動を測定し、視標呈示前後のマイクロサッカードの変化や発生頻度、その他パラメータの最適条件について解析する。 また当教室で開発を進めているヘッドマウント型視野計imoのEyeTracking用のCMOSセンサーを現在の30Hzから300Hzへ上げ、視野検査中の固視微動が検出できるように改良し、リアルタイムで解析が可能なアルゴリズムの開発を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在共同研究を行っている近畿大学生物理工学部と実験環境を統一するために、EyeLink 1000 Plusを両施設において同様の条件で設置した。近畿大学生物理工学部では先行して固視微動計測が行われているため、同一の固視微動計測のプログラムを当研究室でも使用する目的で設定した。 EyeLink 1000 Plusは装僅の規格上、既存の視野計に搭載することが不可能であるため、視標呈示モニター上に現行の視野検査と同様の検査条件を再現するプログラムを作成した。正常被験者の測定を予定していたが、プログラムの作動状況がやや不安定であるためEyeLink 1000 Plusとの連携を含めて、プログラムの修正を重ねている。 ヘッドマウント型視野計imoを利用した視野検査中の固視微動の検出に関して、imoのEyeTracking用のCMOSセンサーを現在の30Hzから300Hzへ改良した。パイロットスタディからさらに瞳孔画像と刺激提示タイミングのキャリブレーション精度を向上させた観察プログラムを作成し健常者10名に対し行った結果、固視微動全体としては視標呈示中の固視微動が最も小さく、視標呈示後に急速に増大する現象が観察された。現在、固視微動からマイクロサッカード成分を抽出するフィルタの作成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、EyeLink1000 Plusで従来の視野検査と同等の検査条件にて視野検査が行えるよう設定した測定環境を整備し、正常被検者を対象に視野検査中に発生する固視微動の測定を開始する。得られたデータより、マイクロサッカードの観察に最適な測定条件を探索する。ヘッドマウント型視野計imoの固視微動検出に関して、マイクロサッカードのみを分離し、視標呈示中の固視微動が最も小さくなる原因がマイクロサッカードの頻度に依存する可能性について評価する。マイクロサッカードの自動検出プログラムを整備し、リアルタイム解析についてもその可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Eye Link、imoを用い安定的に固視微動を評価する測定ソフトの開発が遅れているため、繰越使用額が生じることとなった。次年度に開発費用、解析費用の支払い予定である。
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