研究実績の概要 |
未熟児網膜症の治療には従来の網膜光凝固に加え、薬剤の適応外使用として抗血管内皮細胞増殖因子(抗VEGF)薬を硝子体内投与する抗VEGF 治療が注目されている。しかし、最初に使用されたbevacizumab 投与により血清VEGF 濃度が長期間低下することが報告され、全身的な影響が懸念されている。我々は血清VEGF 濃度抑制効果がより弱いとされるranibizumab を未熟児網膜症治療に用いてきた。これまでranibizumab投与を行った症例(ranibizumab群)、過去に行ったbevacizumab投与症例(bevacizumab群)の治療成績との比較を行った。また、ranibizumab投与前後の血清VEGF濃度の変化についても検討した。 ranibizumab投与を行った22例43眼では全例で未熟児網膜症の活動性低下がみられたが、20.9%で再燃がみられた。bevacizumab投与を行った21例37眼では13.5%の再燃率で、ranibizumab群でやや再燃率がやや高い傾向がみられた(P=0.556)。投与から再燃までの期間はranibizumab群、bevacizumab群でそれぞれ8.3 ± 5.2 , 7.3 ± 1.9週であった(P=0.947)。多重ロジスティック解析で修正35週以下での抗VEGF治療 (OR, 7.524; 95% CI, 1.494-37.89; p = 0.014) と病型として aggressive posterior ROPであったこと (OR, 5.532; 95% CI, 1.049-29.17; p = 0.044)の2つが有意な要因であった。ranibizumab投与後の血清VEG濃度は投与前に比し、投与翌日、1週後で有意に低下したが、2週後には投与前のレベルまで回復した。
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