研究課題/領域番号 |
17K11444
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齋藤 理幸 北海道大学, 大学病院, 客員研究員 (90443944)
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研究分担者 |
野田 航介 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (90296666)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 眼細胞生物学 / 糖尿病網膜症 |
研究実績の概要 |
糖尿病網膜症は糖尿病罹病期間にともなってその発症率が急増する細小血管障害であり、世界的な高齢化にともなって糖尿病網膜症患者数も今後増加すると推測されている。Vascular adhesion protein (VAP)-1/semicarb azide-sensitive amine oxidase (SSAO)は、生体内に存在する一級アミンを酸化してアルデヒド、アンモニアおよび過酸化水素を産生する酵素である。先行研究で、抗VEGF製剤を投与した増殖糖尿病網膜症患者の硝子体中の可溶型VAP-1/SSAO濃度は低下することが明らかとなっており、VEGFが可溶型VAP-1産生経路の上流にあることが示唆されている。本研究の目的は、「糖尿病網膜症眼内における可溶型VAP-1/SSAOの産生メカニズムと同疾患の病態責任分子VEGFの関連」について検討することである。 本年度の研究により、抗VEGF製剤を投与した増殖糖尿病網膜症患者の硝子体中の可溶型VAP-1/SSAO濃度、および酸化ストレスマーカーであるヘキサノイルリジン(N epsilon-(hexanoyl) lysine、HEL)が有意に低下するという結果が得られた。抗VEGF製剤を投与しない増殖糖尿病網膜症患者の硝子体中では可溶型VAP-1/SSAO濃度とHEL濃度に正の相関がみられたが、抗VEGF製剤を投与した群では両者の相関は失われていた。 さらに、ラット網膜血管内皮細胞(TR-iBRB2) を用いて糖尿病を模した25 mMの糖負荷条件でのin vitro解析をおこない、同条件下でVEGF(1-100 ng/ml)刺激をすると、培養上清中のVAP-1/SSAO濃度および、SSAO酵素活性が有意に増加するという結果を得た。VAP-1 mRNAの発現量はVEGF刺激により変化しなかった。これらの結果から、VEGFが糖負荷条件下において網膜血管内皮細胞からのVAP-1/SSAO分泌を亢進させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度交付申請書に記載した研究計画のうち、可溶型VAP-1/SSAOの産生メカニズムにおけるVEGFの関与については検討により学術的意義のある結果を得ていることから、おおむね順調に研究は進展していると自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、VEGFによる可溶型VAP-1/SSAO産生増加の機序を検討する。 近年、可溶型VAP-1/SSAOは膜型VAP-1が蛋白切断を受けて生じる遊離型フォームであることが構造解析によって明らかとなった。しかしながら、可溶型VAP-1/SSAOを遊離させる蛋白分解酵素については不明な点が多い。VEGF添加により発現および活性に変化を生じる蛋白分解酵素をreal-time PCR法、ウェスタンブロット法、ELISA法、ゼラチンザイモグラフィーなどにより探索する。また、発現および活性の増加が認められた蛋白分解酵素に対する阻害剤あるいはsiRNAによって可溶型VAP-1/SSAO産生が抑制されるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年度の研究計画は可溶型VAP-1/SSAOの産生メカニズムにおけるVEGFの関与の検討であったが、順調に研究が行われ、予定よりも低額の研究費で計画遂行が可能であったため。 使用計画:平成30年度に計画している、VEGFによる可溶型VAP-1/SSAO産生増加の機序の検討において、real-time PCR、ウェスタンブロット、ELISA、ゼラチンザイモグラフィーなど実験に用いる試薬・抗体および蛋白分解酵素阻害剤やsiRNAの購入に使用する予定である。
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