研究実績の概要 |
令和元年度では、まず昨年度に作製したCRISPR/Cas9でTGFBI遺伝子のR124C変異を生じたマウス(R124Cマウス)における角膜混濁について再確認を行った。ヒトTGFBI角膜ジストロフィにおいては、homozygousではより早期に強い角膜混濁を生じることが知られているが、R124Cマウスにおいても生後40週で80%のhomozygousマウスに角膜混濁が生じ、heterozygousマウスでは9.1%に角膜混濁が生じていた。角膜混濁部位では、TGFBIタンパク(TGFBIp)の沈着が亢進しており、TGFBI遺伝子の発現増加ではなく、TGFBIpの分解阻害によるものと考えられた。昨年度の結果と踏まえこれらのデータをまとめ論文を投稿し、受理された(Kitamoto K et al. Sci Rep 10, 2000, 2020)。 次にR124Cマウスを用い、CRISPR/Cas9を用いたTGFBI角膜ジストロフィに対する遺伝子治療について検討を開始した。まずはGFPマウスに対して、GFP遺伝子をターゲットとしたCRISPR/Cas9システムを発現するレンチウイルスベクターを作製した。まず本ウイルスベクターをGFP発現HEK293細胞株を用いてin vitroで確認を行った。すると、遺伝子導入をした細胞ではGFPによる蛍光強度は減弱した。次にGFPマウスの角膜に本ウイルスベクターを導入し、1週間後に眼球を摘出し、角膜を観察したところ、コントロールと比較して、角膜上皮と実質においてGFPによる蛍光の減弱が認められた。次年度からはTGFBIをターゲットとしたレンチウイルスベクターの作製に取り掛かる予定である。
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