研究課題/領域番号 |
17K11447
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
堀田 喜裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (90173608)
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研究分担者 |
東 範行 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 感覚器・形態外科部 眼科, 医長 (10159395)
近藤 寛之 産業医科大学, 医学部, 教授 (40268991)
細野 克博 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60402260)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 未診断眼疾患患者 / 遺伝子診断 / 次世代シークエンサー |
研究実績の概要 |
臨床的な眼所見を有しながら通常の医療の中で診断に至る事が困難な患者(未診断眼疾患患者)は、複数の医療機関を受診しても原因がわからず治療法も見つからないまま長期に渡って様々な症状に悩まされている。これら未診断眼疾患患者は、通常の眼科検査を適切に行うことによって診断可能な場合もあるが、症例数が少なく診断が困難な希少眼疾患患者のこともある。近年、次世代シークエンサー(NGS)と呼ばれる機器の開発により、様々な疾患の原因遺伝子を同定する事が可能となった。診断のつかない患者に対して原因遺伝子を同定する事で、新たな疾患概念を確立して診断する事が可能となってきている。そこで本研究はわが国の希少・未診断眼疾患患者に対して地域網羅的な診療体制を構築して患者収集を行い、NGS用いた遺伝子変異探索から診断法の開発を行う。 本年度は浜松医科大学(東海・北陸地区)と国立成育医療研究センター(関東地区)より希少眼疾患患者の収集を行った。結果、浜松医科大学より若年発症の網膜色素変性症患者を4家系5症例、成育医療研究センターより色素失調症患者を4家系4例収集できた。若年発症網膜色素変性症患者に関しては既に収集済みの症例を含めて既知の網膜色素変性の原因遺伝子を対象としたターゲットシークエンス解析を実施している。色素失調症患者に関してはサンガー法を用いて既知原因遺伝子IKBKGの変異解析を実施している。上記方法にて疾患原因変異が得られなかった症例に対しては全エキソーム解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、わが国の希少・未診断眼疾患患者に対する地域モデル的な診療体制を構築して患者収集を行い、NGS用いた遺伝子変異探索から診断法の開発を行う。その為、本年度は以下の研究を実施した。 (1)診療体制の構築:浜松医科大学(東海・北陸地区)、国立成育医療研究センター(関東地区)を受診した「眼において一元的に説明できない臨床所見を長期に渡って有し、生活に支障がある症例、かつ、なんらかの遺伝子異常が疑われる(家系に類似した病状が認められる場合を含む)症例」を収集対象とした。また、本研究では未診断眼疾患患者だけではなく、既知の眼疾患の非典型例患者も収集対象とした。患者と家族には、倫理規定に基づき遺伝子検査について十分な説明を行い、インフォームドコンセントが得られた場合にのみ検体(末梢血または唾液)を採取し、DNAの抽出を行う。患者より検体を採取する際に可能な限り家族の検体も同時に収集した。 (2)遺伝子変異探索:使用機器は、本学先進機器共用推進部の次世代シークエンサーMiSeq(イルミナ社)を使用した。本研究では様々な眼疾患患者の検査に対応できるように既知の遺伝性網膜疾患原因遺伝子に加えて、眼形態形成異常の原因遺伝子(原因遺伝子候補を含む)を解析対象とした遺伝性眼疾患パネルの設計を計画した。変異解析する遺伝子は、遺伝性の網膜関連疾患の原因遺伝子データベースRetNet(https://sph.uth.edu/retnet/)またはヒト遺伝子変異データベース(HGMD)に記載されている遺伝子から111個を選択した。サンプルライブラリーの作成は、HaloPlex Target Enrichment kit(アジレント社)を使用した。MiSeq用のシークエンス試薬はMiSeq Reagent Kit v2 300 cycle (イルミナ社)を使用した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)診療体制の構築:東海・北陸地区(浜松医科大学)と関東地区(国立成育医療研究センター)から引き続き希少・未診断眼疾患患者を収集する。また上記2施設の他に九州地区の拠点として産業医科大学と連携を行い、更なる地域の医療連携を意識した診療体制を構築する。 希少な眼疾患患者を検出・収集するには全国の眼科クリニックから収集出来るような地域の医療連携が重要である。その為に本研究の実施について情報発信を行う。日本医療研究開発機構 難治性疾患実用化事業の「成人における未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究」によるネットワークも利用して、希少・未診断眼疾患患者の収集の説明や収集対象患者について情報提供を実施し、各地区の眼科クリニックからも検体収集が出来る診療体制の構築を目指す。 (2)遺伝子変異探索:(1)により新たに収集した希少・未診断眼疾患患者に対してターゲットシークエンス解析を実施する。また本年度、遺伝性眼疾患パネルで疾患原因変異を同定出来なった症例に対しては全エキソーム解析を実施する。 更に下記の研究も追加する。 (3):情報の共有できる体制の構築: (1), (2)で得られたデータを蓄積し、臨床情報と遺伝情報を統合して代表者、分担者、検体提供医師の間でデータ共有できる仕組みを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究消耗品の調達に際し、予定額より安価で購入出来たため1903円の繰越金が生じた。
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