研究実績の概要 |
多発性硬化症の再発抑制剤として既に臨床応用されているフマル酸ジメチル(DMF)とその誘導体であるフマル酸1-メチル (Monomethyl fumarate: MMF)の持つ抗酸化作用と免疫調節作用により、視神経挫滅(ONC)による網膜神経節細胞(RGC)の細胞死に対して、神経保護効果を有するか否かを検討した。ラットONC後に、DMF/(MMFを連日7日間投与し、抗TUBB抗体を用いた免疫染色にてRGCを可視化し、平均細胞密度を算出し生存促進効果を評価した。その結果、DMF/MMFともに濃度依存性に生存RGC密度は上昇し、DMF/MMFともに100mg/kgの濃度にて最大効果が得られた。さらに、DMF/MMFのRGCの機能維持効果をRGC成分である網膜電図の陽性暗順応閾値応答 (positive scotopic threshold response; pSTR)の振幅変化を検討した。3×10-6 (cd・s/mm2)の刺激輝度において、ONC+vehicle投与群に比べてMMF投与群では有意にpSTRの振幅は増大していた。また、1×10-6 ( cd・s/mm2)の刺激輝度において、ONC+vehicle投与群に比べてDMF/MMF投与群ともに有意にpSTRが増大していた。DMF/MMFともに、ONC後のRGCの生存を機能的にも促進させることが明らかとなった。そして、DMF/MMF 100mg/kgを連日投与した後、Keap1/Nrf2の活性化により、抗酸化酵素群の一つであるヘム酵素添加酵素(HO-1)の網膜内発現レベルを検討したところ、DMF/MMFの連日投与により、網膜内のNrf2, HO-1の蛋白発現レベルは上昇していた。以上より、DMF/MMFは、ONC後のRGCを機能的・形態的にも生存を促進させ、抗酸化酵素のHO-1の網膜内蛋白発現の上昇も伴っていた。
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