加齢や生活習慣病に伴う様々な眼疾患(糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性、黄斑上膜)において、網膜の中心部(黄斑)に細胞間質液が過剰に貯留した 状態を黄斑浮腫といい、重篤な視力障害の原因となる。現在黄斑浮腫に対しては、薬剤、網膜光凝固、手術等、網膜血管の透過性亢進を阻害する治療が行われて いる。しかし治療効果に限界があり新たな治療法の開発が必要である。本研究では、細胞間質液の恒常性維持に重要な膜タンパクであるアクアポリン(AQP)に着 目し、AQPの発現や機能を調節することによって黄斑浮腫を改善できるのではないかとの仮説を立てた。そこで本研究では黄斑浮腫の病態におけるAQPの発現や機 能変化 を明らかにすることを目的とし、網膜色素上皮細胞及びミュラー細胞を培養し、細胞に伸展ストレスを加えた場合の細胞のmRNA及び蛋白発現について検討した。そして、各細胞が生着し伸展刺激に耐えることが可能な細胞伸展システムの条件を見出した。また、細胞に種々の伸展刺激を与え、AQPやタイトジャンクションに関連する膜タンパクやサイトカインの発現の変化についてPCR法で検討した。さらにこれらの因子の蛋白レべルにおける発現変化 について、western blotting法で検討を行っ た。最後に伸展ストレスが眼疾患の病態を反映するように、種々の伸展法を考案し、各ストレスにおける細胞応答について検討した。
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