研究課題/領域番号 |
17K11453
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
福田 憲 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (70335751)
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研究分担者 |
石田 わか 高知大学, 医学部, 特任助教 (40761705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 結膜 / 線維芽細胞 / P2X7受容体 / 結合組織型マスト細胞 / 粘膜型マスト細胞 |
研究実績の概要 |
マウス骨髄から骨髄由来マスト細胞を誘導し、結膜、皮膚の線維芽細胞と共培養し、マスト細胞が結合組織型(connective tissue mast cell; CTMC)あるいは粘膜型(mucosal mast cell; MMC)に分化するか検討した。まずマウスから骨髄細胞を採取し、interleukin(IL)-3を添加して4週間培養し、骨髄由来マスト細胞 Bone marrow-derived cultured mast cells(BMMC)を誘導した。結膜線維芽細胞をフィーダー細胞としてマスト細胞を加え2週間培養し、PCR法でBMMCと比較した。結膜線維芽細胞と共培養したマスト細胞はBMMCに比して、murine mast cell protease (Mcpt) 4 およびMcpt5 mRNAの発現が有意に上昇し、ATP受容体であるP2X7受容体(P2X7R) mRNAの発現が軽度低下していた。またBMMCをtranswellで線維芽細胞と接触しないように2週間共培養するとMcpt5 mRNAは上昇しなかったがMcpt4の上昇とP2X7Rの低下は同様の結果であった。従って、結膜線維芽細胞由来の液性因子によってBMMCからCTMCへの分化が促進したと考えられた。これは皮膚線維芽細胞との共培養による既報の結果と同様の現象であるが、既報と比してP2X7Rの発現抑制効果は低かった。またMMCのマーカーであるMcpt 2はBMMCと比しても低下しておらず、CTMCへの分化・成熟が十分でない可能性も考えられた。次にマイトマイシンC処理した線維芽細胞で同様の検討を行い、肺由来線維芽細胞と共培養するとMcpt 2 mRNAが上昇した。しかしながら結膜および皮膚由来線維芽細胞と共培養したマスト細胞は、Mcpt 4, 5 mRNAの発現が上昇しなかった。また肺、結膜および皮膚の線維芽細胞全てにおいてP2X7R mRNAの発現が低下していた。本年度の検討においては、結膜線維芽細胞との共培養によるマスト細胞の分化・成熟は十分でないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、マウスから骨髄由来マスト細胞を誘導し、種々の線維芽細胞と共培養する実験系を確立し、マスト細胞がどのようなフェノタイプに分化するか検討することを目標とした。マウスの結膜、皮膚、肺からそれぞれ線維芽細胞を単離し継代培養することができた。しかしながら大腸および小腸由来の線維芽細胞は、腸内に常在する細菌のコンタミネーションにより、継代培養することが難しかった。現在腸管由来の線維芽細胞の単離法や培養法を改良して、これらの細胞の培養ができるように検討している。 さらに上記のように結膜線維芽細胞との共培養により、BMMCからCTMCへの分化がある程度誘導された。しかしながら陽性対照として用いた皮膚線維芽細胞とBMMCの共培養の結果が、既報のCTMCに分化するという結果と一致しなかった。またマイトマイシンC処理を行った結膜線維芽細胞と共培養すると、P2X7Rは抑制されるものの、CTMCのマーカーであるmMCPT4などの発現も低下したため、現在マイトマイシンCの濃度や処理時間などの検討を行い、陽性対照である皮膚線維芽細胞とBMMCの共培養の結果が既報と一致するように培養法を改良・検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、前年度の課題の継続である組織特異的マスト細胞への分化・成熟を誘導する。具体的には、骨髄由来マスト細胞を誘導する際にIL-3のみでなくSCFを100ng/ml添加して4週間培養し、マスト細胞を分化させて実験に使用する。このマスト細胞を、結膜、皮膚、肺の線維芽細胞と共培養し、4日毎に細胞解離液を用いて剥がし、フィルターを通してマスト細胞を回収、新しいフィーダー細胞にマイトマイシンC処理してからマスト細胞を添加、2週間培養し解析を行う。共培養したマスト細胞は、real-time RT-PCR法を用いてMcpt2、Mcpt4、Mcpt5、P2X7 mRNAの遺伝子発現を解析する。さらに、マスト細胞を、アルシアンブルー色素とサフラニン色素を用いて細胞質内のコンドロイチン硫酸やヘパリンを染色し、それぞれの線維芽細胞と共培養したマスト細胞が、CTMCあるいはMMCのどちらの形質に成熟したかを解析する。この実験を元に、結膜線維芽細胞と共培養したマスト細胞がCTMCに分化すれば、線維芽細胞とマスト細胞の細胞間情報伝達が必要かどうかについて、フィーダー細胞と接着させる状態でマスト細胞を培養する群と、Transwellを使用してフィーダー細胞とマスト細胞を培養する群を設けて、線維芽細胞由来のどの因子が中心的役割を果たすか検索する。 また結膜線維芽細胞とマスト細胞の創傷治癒への関与を明らかにするために、3次元コラーゲンゲル内で共培養してコラーゲンゲル収縮に与える単独あるいは相乗効果があるかを検討する。
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