研究課題
マウス骨髄から骨髄由来マスト細胞を誘導し、種々の線維芽細胞と共培養し、マスト細胞が結合組織型(connective tissue mast cell; CTMC)あるいは粘膜型(mucosal mast cell; MMC)に分化するかを検討した。マウス骨髄から細胞を採取し、interleukin(IL)-3を添加して4週間培養し、骨髄由来マスト細胞 (bone marrow-derived cultured mast cells, BMMC)を誘導した。結膜、皮膚あるいは肺由来の線維芽細胞をフィーダー細胞としてマスト細胞を加え2週間培養し、PCR法でBMMCと比較した。結膜線維芽細胞と共培養したマスト細胞はBMMCに比して、murine mast cell protease (Mcpt) 4 mRNAの発現が有意に上昇し、ATP受容体であるP2X7受容体 mRNAの発現が有意に低下していた。従って、結膜線維芽細胞由来の因子によってBMMCからCTMCへの分化が促進したと考えられた。これは陽性対象として用いた皮膚線維芽細胞との共培養による結果と同様であった。一方、肺由来線維芽細胞とマスト細胞を共培養すると、結膜および皮膚繊維芽細胞と共培養したマスト細胞に比し、Mcpt4 mRNAの発現が有意に低下しており、MMCが誘導されたと考えられた。さらに結膜線維芽細胞とマスト細胞をⅠ型コラーゲンゲル内で共培養し、コラーゲンゲル収縮に与える影響を検討した。結膜線維芽細胞は細胞数依存的にコラーゲンゲル収縮を促進した。一方、マスト細胞は単独では何ら影響しなかったが、結膜線維芽細胞の存在下ではコラーゲンゲル収縮をさらに促進した。これらの結果より、マスト細胞が結膜線維芽細胞によるコラーゲンゲル収縮を何らかの因子を介して促進し、緑内障手術後の結膜の瘢痕化に関与している可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、昨年度に引き続きマウスの骨髄からマスト細胞(bone marrow-derived mast cell, BMMC)を誘導し、種々の線維芽細胞と共培養しマスト細胞がどのようなフェノタイプに分化するか検討した。マウスの結膜、皮膚、肺からそれぞれ線維芽細胞を単離し継代培養した後、マイトマイシンCで処理する。その後BMMCに IL-3とstem cell factor (SCF)を添加してそれぞれの線維芽細胞と共培養した。4日毎にBMMCを剥がし、新たな線維芽細胞と培養することを4回繰り返し、2週間後に成熟マスト細胞として回収した。結膜および皮膚線維芽細胞と共培養したマスト細胞は、BMMCおよび肺線維芽細胞と共培養したマスト細胞に比しP2X7R mRNAの発現が有意に抑制されていた。また結合組織型マスト細胞(CTMC)のマーカーであるmMCPT4 mRNAも、結膜および皮膚線維芽細胞と共培養したマスト細胞ではBMMCおよび肺線維芽細胞と共培養したマスト細胞に比して、発現が上昇していた。これらの結果より結膜線維芽細胞は、皮膚線維芽細胞と同様にBMMCをCTMCへ分化誘導することができると考えられた。また結膜線維芽細胞とマスト細胞をⅠ型コラーゲンゲル内で共培養し、コラーゲンゲル収縮に与える影響を検討した。結膜線維芽細胞は細胞数依存的に、コラーゲンゲル収縮を促進した。一方、マスト細胞単独では何らコラーゲンゲル収縮には影響しなかったが、結膜線維芽細胞の存在下ではマスト細胞の細胞数に依存してコラーゲンゲル収縮がさらに促進し、マスト細胞が結膜線維芽細胞によるコラーゲンゲル収縮を何らかの因子を介して促進していることが示唆された。
平成31年度は濾過手術後の瘢痕形成におけるマスト細胞の関与を解明するために、本年度で得られたマスト細胞と結膜線維芽細胞の共培養によるコラーゲンゲル収縮の相乗効果に重要な因子の解明を目的に研究を行う。コラーゲンゲル収縮にはmatrix metalloproteinase (MMP)が関与することが報告されている。そこでマスト細胞、結膜線維芽細胞の単独あるいは共培養の培養上清を、gelatin zymography法を用いて含まれるMMPの発現および活性化の程度を調べる。MMPの関与が考えられれば、MMPの阻害剤を用いてコラーゲンゲル収縮が抑制されるか検討する。さらにコラーゲンゲル収縮が、コラーゲン分解によるものかどうかを除外するために、上清中のヒドロキシプロリンを測定することで、コラーゲン分解の定量を行う。
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すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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