研究課題/領域番号 |
17K11455
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久冨 智朗 九州大学, 医学研究院, 准教授 (50404033)
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研究分担者 |
園田 康平 九州大学, 医学研究院, 教授 (10294943)
池田 康博 九州大学, 医学研究院, 准教授 (20380389)
吉田 茂生 久留米大学, 医学部, 教授 (50363370)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 黄斑浮腫 / 糖尿病 / 透過性亢進 / ATP / VEGF / 網膜 / 血管内皮 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
黄斑浮腫は短期的には組織間液の貯留によると考えられるが、この過程で網膜神経細胞障害を生じて最終的に不可逆的な網膜変性を来し、大きな臨床的意義を持つと考えられる。黄斑浮腫に続いて網膜細胞変性萎縮が起きる機序を細胞外遊離ATP を対象に解明を狙い実験を行った。 初年度の研究成果では網膜初代培養細胞で網膜神経細胞を一定期間維持することができ、免疫染色ではP2X7 レセプターの発現を確認したことを報告した。網膜の神経細胞には細胞表面レセプターであるP2X7受容体が発現しており、アデノシン3リン酸(Adenosine triphosphate; ATP)が結合することで細胞死を引き起こすことがわかった。初代培養系の培養上清を回収し、ATP 濃度を測定した。培養上清中に血清およびATP を添加し細胞死を確認することができた。この細胞外に遊離したATPの受容体への結合を阻害する目的で、P2X7受容体の選択的阻害剤である硝子体染色剤Brilliant blue Gを添加すると、細胞死を抑制することができた。 今年度は黄斑浮腫の原因となる血管透過性を再現するため、マウス眼球に眼内ATP の眼内投与を行い、黄斑浮腫による黄斑変性の主要な原因と考えられる網膜細胞死を評価した。網膜細胞死により網膜の浮腫を伴う、網膜細胞死、網膜変性が観察された。病理学的に評価し、臨床的に観察される所見と比較し臨床像をよく反映したモデルと考えられた。我々が内境界膜染色用に開発しChromoVitrectomy の中心的な役割を担うBBGは、ATPの受容体であるP2X7受容体の選択的阻害剤という薬理作用を持っていることを報告している。透過性亢進によりATPは不可逆的網膜変性をおこし得ることがわかり、治療標的と考えられた。マウス眼球にATPとBBGを同時投与したところ、網膜神経細胞死はコントロールと比較し抑制されうることがわかった。BBGには内境界膜染色作用以外にも網膜浮腫に伴う神経細胞死を抑制する作用が期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATP及びP2X7受容体の占める役割を示唆するデータが得られており、病理学的にも臨床像を反映した疾患モデルが構築できている。
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今後の研究の推進方策 |
遊離ATPによる網膜細胞死モデルが作成できたことから、より直接的なVEGFによる透過性亢進とATP遊離が再現できる疾患モデル動物作成を行う。また受容体ノックアウト動物を用いた実験により病態への直接的な関与を明らかにしたいと考える。 これらの知見を以前我々が報告したヒト硝子体での測定結果とあわせ、黄斑浮腫の疾患病態へのATP関与とBBGの持つ治療可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
疾患モデル動物の確立に試薬の問題、調達の遅れがあったため、次年度使用額が生じた。計画計画のうち試薬の調達は目途がつき、測定機器の更新も進んだため、本来の測定が実行可能となった。遺伝子改変動物についても供給の目途がたってため、購入・実験計画を推進したい。
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