研究課題
黄斑浮腫は短期的には組織間液の貯留によると考えられるが、この過程で網膜神経細胞障害を生じて最終的に不可逆的な網膜変性を来し、大きな臨床的意義を持 つと考えられる。黄斑浮腫に続いて網膜細胞変性萎縮が起きる機序を細胞外遊離ATP を対象に解明を狙い実験を行った。これまで網膜初代培養細胞で網膜神経細胞を一定期間維持することができ、免疫染色ではP2X7 レセプターの発現を確認し、アデノシン3リン酸(Adenosine triphosphate; ATP)が結合することで細胞死を引き起こすことがわかった。培養上清を回収し、ATP 濃度を測定した。培養上清中に血清およびATP を添加し細胞死を確認することができた。この細胞外に遊離したATPの受容体への結合を阻 害する目的で、P2X7受容体の選択的阻害剤である硝子体染色剤Brilliant blue Gを添加すると、細胞死を抑制することができた。 また黄斑浮腫の原因となる血管透過性を再現するため、マウス眼球に眼内ATP の眼内投与を行い、原因と考えられる網膜細胞死を評価した。我々が内境界膜染色用に開発しChromoVitrectomy の中心的な役割を担うBBGは、ATPの受容体であるP2X7受容体の選択的阻害剤と いう薬理作用を持っていることを報告している。透過性亢進によりATPは不可逆的網膜変性をおこし得ることがわかり、治療標的と考えられた。マウス眼球にATP とBBGを同時投与したところ、網膜神経細胞死はコントロールと比較し抑制されうることがわかった。BBGには内境界膜染色作用以外にも網膜浮腫に伴う神経細胞 死を抑制する作用が期待された。一部のデータについては令和3年度日本臨床眼科学会総会、評議員指名講演においてWeb講演にて報告し、日本眼科学会雑誌、第125巻臨時増刊号において報告書を作成し成果を発表した。
3: やや遅れている
ATP及びP2X7受容体の占める役割を示唆するデータが得られており、病理学的にも臨床像を反映した疾患モデルが構築できている。一部のデータについては令和3年度日本臨床眼科学会総会、評議員指名講演においてWeb講演にて報告し、日本眼科学会雑誌、第125巻臨時増刊号において報告書を作成し成果を発表した。COVID-19感染症対策のために、病院、研究施設間の人的移動、試料や物品の移動が制限を受けております。また試薬の納入遅延も顕著になっております。今回、学術振興会の新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科研費(基金分)の補助事業期間再延長承認申請に従い、様式F-14-CV、承認申請書を申請しております。
遊離ATPによる網膜細胞死モデルが作成できたことから、より直接的なVEGFによる透過性亢進とATP遊離が再現できる疾患モデル動物作成を行う。また受容体ノッ クアウト動物を用いた実験により病態への直接的な関与を明らかにしたいと考える。 これらの知見を以前我々が報告したヒト硝子体での測定結果とあわせ、黄斑浮腫の疾患病態へのATP関与とBBGの持つ治療可能性を検討する。福岡県の緊急事態宣言、福岡大学筑紫病院、九州大学病院の他施設間共同研究の再開に伴い、足りないデータを補完し、現在作成中の論文の完成、投稿まで行いたい。
COVID-19感染症対策のために、病院、研究施設間の人的移動、試料や物品の移動が制限を受けております。また試薬の納入遅延も顕著になっております。今回、学術振興会の新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科研費(基金分)の補助事業期間再延長承認申請に従い、様式F-14-CV、承認申請書を申請しております。緊急事態宣言、福岡大学筑紫病院、九州大学病院の他施設間共同研究の再開に伴い、足りないデータを補完し、現在作成中の論文の完成、投稿まで行いたい。遊離ATPによる網膜細胞死モデルが作成できたことから、より直接的なVEGFによる透過性亢進とATP遊離が再現できる疾患モデル動物作成を行う。また受容体ノッ クアウト動物を用いた実験により病態への直接的な関与を明らかにしたいと考える。 これらの知見を以前我々が報告したヒト硝子体での測定結果とあわせ、黄斑浮腫の疾患病態へのATP関与とBBGの持つ治療可能性を検討する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
日本眼科学会雑誌 (0029-0203)125巻3号 Page266-284(2021.03)
巻: 125 ページ: 266-284