研究実績の概要 |
現在、抗VEGF療法の幅広い使用とともに、抗VEGF療法では効果のない病態が明らかになってきた。その中で虚血や網膜下線維化は抗VEGF療法時代のアンメットニーズと言えるが、その詳細なメカニズムは不明であり、それらに対しての有効な治療法はない。。今回、われわれは網膜虚血、網膜下線維化の病態形成に炎症、とくにマクロファージが関与するとの仮説を立て、二つのモデル動物①虚血を誘導する網膜視細胞VEGF強制発現マウス(Kimbaマウス)②レーザー誘導網膜下線維化モデルを用いて、虚血または線維化関連マクロファージについて検討を行った。M1マクロファージマーカーとしてCD80 F4/80, M2マクロファージマーカーとしてCD206 F4/80を用いた。従来の計画である生後8週齢kimbaマウスにおいて、免疫染色において網膜内にM1M2マクロファージの浸潤を認めた。M1マクロファージは主に虚血部位、新生血管領域に、またM2マクロファージは網膜表層と新生血管領域に観察された。さらにCD80, CD206を含めたその他のM1 (CD86, NOS2, CD40), M2マーカー(CD163, CD204)においてもwild typeマウスと比較し、mRNAレベルの有意な増加を認めた。次にday10, 3週, 8週と時間経過を追ったところ、3週で多くのM1, M2マーカーがピークに達していることを観察した。また、Kimbaマウス8週齢のFACSにおいてもCD80/F4/80, CD206/F4/80の浸潤を観察した。さらにKimbaマウスにおいて、電子顕微鏡を用いても網膜内へのマクロファージ浸潤を確認している。網膜下線維化モデルにおいては、免疫染色において同様に線維化部位におけるCD80 F4/80細胞, CD206 F4/80細胞がtype1 collagen陽性組織周囲への浸潤を確認している。しかし、FACSを用いた検討は未施行である。
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