研究課題
本研究の目的は抗VEGF療法により改善されない網膜下線維化と網膜虚血という2つの病態解明をマクロファージの観点から解明することである。網膜虚血はマウス高酸素負荷虚血モデルを使用し、M1M2マクロファージの浸潤、M1M2マーカーmRNAレベルでの発現上昇を観察し、虚血領域にはM1マクロファージが有意に存在することを観察した。M1マクロファージを主に消去する塩化ガドリニウムにより虚血の改善を認めた。又以前われわれが同マウスモデルにて網膜虚血を改善することを報告しているROCK阻害剤によってもM1マクロファージの有意な減少を観察した。このROCK阻害剤投与ではMIPではなくMCP1特異的な発現抑制を認めCCR2陽性細胞浸潤を抑制していた。又抗VEGF阻害剤では虚血改善は認めず、むしろM1マクロファージ増加を認めた。詳細な分画同定検討により、末梢血由来のCCR2,CX3CR1陽性細胞関与が示唆された。さらにこれら細胞群の遺伝子発現解析のためシングルセル解析を行なった。網膜下線維化検討のためにレーザー誘導脈絡膜新生血管マウスモデルを用いた。Fate mapping解析を行い、線維化の主要構成成分であるmyofibroblastはRPE由来であることを確認した。またRPEからmyofibroblastの変化には上皮間葉移行EMTの関与が報告されているが、ROCK阻害剤, ROCK RPE特異的ノックアウトマウスにより網膜下線維化が抑制された。in vitroの解析においてもROCK阻害剤によってEMTのみならず、METが生じていることを観察した。これらより網膜下線維化の発生にはROCK活性化によるRPEのEMTが関与しており、ROCK阻害剤は網膜下線維化予防さらには改善の分子標的薬剤の候補であることが示唆された。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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