研究実績の概要 |
昨年度までに、増幅工程により5週間で約10,000倍まで未分化増殖性細胞を増幅、分化誘導工程で成熟分化角膜内皮細胞含有率~85%を達成した。これらの細胞の純化法としては代謝経路の違いを利用して行なう方法、セルソーターを利用したソーティング法や磁気ビーズを利用した分離法がある。一般的なセルソーターによる方法ではソーティング時の細胞ダメージが大きく、分離後の再播種・培養工程における形態の悪化が懸念された。既に報告しているCD44 Magnetic beadsを用いた純化法(Toda M. et al. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2016;57: 4599-4605)は、本課題の分化誘導工程後の細胞に適用可能であるが、臨床応用にはCliniMACS ProdigyなどのGCTP環境下閉鎖系で処理が可能な装置が必要とされる。さらにこれとは別に、未分化幹細胞様増殖性細胞高効率増幅-成熟分化法では治験時製法による生産物よりも細胞サイズが大きいという課題も見られた。この原因として増幅工程により大きな培養ストレスが生じているのではないかと推測された。 そこで別の方法として、培養ストレスの主要因を同定し、これを軽減することで治験時の成熟分化型角膜内皮細胞増殖培養法の増幅・分化誘導効率を改善することを試みた。その結果、約7週間で1,000倍に増幅、1か月の分化成熟培養により、FACS解析で95%を超える純度の成熟分化細胞を得ることができた。およそ3か月で500人分に相当する移植可能な成熟分化細胞を得られることになる。本法は増幅効率という点では未分化幹細胞様増殖性細胞高効率増幅-成熟分化法に劣るものの、一眼から100人水準の増幅であった治験時製法に比べ大幅に増幅効率が改善されたものである。品質もより均質で小型のものが得られている。以上、実用化に近い製法が確立された。
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