研究実績の概要 |
RPEは視細胞外節を貪食し網膜組織環境の恒常性を維持する。外的ストレスで貪食能が低下するとドルーゼン(老廃物)が網膜下に蓄積する。我々は脈絡膜浸潤マクロファージ(Mps)によるRPEの本恒常性維持機能の破綻がAMD早期病態の一端を担うことを報告した(2016年, IOVS, 山脇 伊東 羽室ら)。組織炎症では貪食能を有するMpsがGlycolytic Mpsに転換し組織障害が起こる。随伴する低酸素環境下でOXPHOS傾斜Mpsにリプログラムされ血管新生や瘢痕形成を招来する(2011年, 園田 羽室ら, AMDモデル)。Mps/RPE共培養系において、前炎症性サイトカインIL-6, IL-8, MCP-1産生やVEGFが増強され、本作用の一部はMps産生TNF-αにより担われる。このTNF産生は未変性RPEにより抑制されるが、RPEがMDAなど酸化脂質に修飾さると本抑制効果は消失する。 本年度はRPE→Exosome→Mps→TNF-α→RPE→MCP-1, IL-6, VEGFの炎症増悪回路について前年度の知見を補強する形で下記のことを確認した。共培養上清由来濃縮Exosome (Exo)は共培養系でのVEGF産生増強には部分的寄与に留まり、Exoに全面的に依存するMCP-1, IL-6産生と異なることがカルチャーインサート実験で判明した。RPEの分泌するExoは確かにRAW264に取り込まれるが、本取り込みによって後者マクロファージからはExoは産生されないことが判明した。ヒトiPS細胞由来RPE細胞とTHP細胞からPMA処理で分化したMpsとの共培養系でもMCP-1, IL-6, VEGFの産生増強は確認され、共培養によるExoの産生増強も確認された。水平方向のカルチャーインサート系でも増強が認められ、ヒトの系でも昨年度までに確認されたマウス系での我々の知見は確認された。
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