研究課題
網膜色素変性は、徐々に進行して失明に至る遺伝性疾患として知られる。有病率は国内だけでなく全世界的に1:4000-8000人と比較的高いが、これまでに確立された治療法はない。その一因は、ヒト網膜の細胞を採取して研究することは倫理的にできず、さらに採取したとしても解析に充分量のサンプルを得られないことがある。そこで、本研究では、患者の体細胞から樹立した人工的多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell; iPSC)を用いて網膜3次元培養を行い、網膜色素変性の病態を解析することとした。この方法は患者の皮膚や血球といった体細胞を採取することで、遺伝子変異を保持したiPSCを樹立し、それを用いて3次元構造を持つ網膜組織培養により分化誘導することが可能であり、疾患病態の研究に適している。これを用いて網膜色素変性症の病態を解析すると共に、そのメカニズムに介入することで世界初で新規の治療法の開発につなげる。申請者のグループでは、これまでに2次元培養における患者遺伝子変異を保持したiPSC由来網膜細胞の分化誘導を行い発表したが、3次元構造により網膜の微小環境を模倣した状態で解析することは、さらに生体に近い状態での解析法といえ、得られる情報が多い。そこで本研究では、網膜色素変性患者由来のiPS細胞を入手し、これを増やしてストックを作製するとともに、その3次元培養を開始・続行しており、表現型の解析のための系を立ち上げている。
2: おおむね順調に進展している
元来ヒト網膜3次元培養は数か月単位の時間のかかる研究であるが、それを着実に進めているため。培養に必要な施設等はそろっている。
網膜色素変性患者由来のiPS細胞を3次元培養により網膜3次元組織に分化誘導し、そのうえで視細胞の変性・細胞死を解析する。組織染色のほか、分子の発現についてはリアルタイムPCRを用いて解析する予定である。さらに小胞体ストレスを中心にさらに詳しい分子の解析をするとともに、ラパマイシンやAMPK活性化剤の効果を解析することで、小胞体ストレスから視細胞死に至る分子経路の詳細を明らかにし、さらに候補となり得る化合物の選択を行う。
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