研究課題/領域番号 |
17K11469
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
高木 均 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (70283596)
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研究分担者 |
北岡 康史 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (10367352)
塩野 陽 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (20737598)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ヒストン修飾 |
研究実績の概要 |
我々はエピジェネティックな機構として、特にヒストン修飾因子に着目して研究を行った。これまで多くのヒストン修飾酵素が報告されてきたが、それらの中で我々はヒストンH3K9の脱メチル化酵素であるjmjd1aに注目して実験を行っている。過去の報告によると、jmjd1aは発生の中で脱メチル化酵素として性決定に影響する蛋白であることが報告されていたが、我々は脂質代謝に関わる蛋白であること、更にそれらはヒストン脱メチル化酵素としてではなく、転写のコファクターとして影響することを報告した。jmjd1aは臓器や、細胞によって作用が異なる蛋白であるが、近年、VEGFと異なるメカニズムで血管新生に作用している可能性が報告された。血管新生は糖尿病網膜症進行の主要な現象であり、それらを抑制することは糖尿病網膜症の新たな治療に繋がるため、実験を行った。 まず我々は低酸素におけるjmjd1a発現量を評価するために、血管内皮細胞であるHUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞)を低酸素状態で培養し、jmjd1aが低酸素化で発現が上昇しているのをウエスタンブロットにて確認した。 続いて網膜血管の虚血モデルである未熟児網膜症モデルマウスをワイルドタイプのマウスで作成し、虚血網膜におけるjmjd1aの発現が上昇することをウエスタンブロットにて確認した。 更に、jmjd1aノックアウトマウスとワイルドタイプマウスの未熟児網膜症モデルを作成し、網膜フラットマウントにて、jmjd1aの血管新生への影響を検討した。結果ヘテロマウスでは血管新生への影響が見られなかったが、ノックアウトマウスでは予想に反して虚血領域の拡大がみられた。しかしながら現時点では個体差の可能性も否定できないため、今後再現実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
jmjd1aノックアウトマウスのフェノタイプを確認できる実験系が確立され、jmjd1aが未熟児網膜症モデルマウスにおける異常な網膜血管へ影響していることがこれまでの実験にてわかった。 jmjd1aノックアウトマウス、ワイルドタイプマウスの未熟児網膜症モデルでの実験で、jmjd1aの血管新生へのより詳細なメカニズムを検討中である。 現在までに虚血状態による網膜にjmjd1aが関与している事が判明しており、今後はその再現実験、jmjd1aノックアウトマウスでのヒストン修飾や転写調節のメカニズムを通して遺伝子解析を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は虚血状態での網膜血管へのjmjd1aの影響の再現を行い、それらのメカニズムの解析を行う。 血管内皮細胞を低酸素状態で培養し、siRNAを用いてjmjd1aのノックダウンを行い、DNAマイクロアレイによる網羅的解析を行う。さらに、jmjd1aがどのように転写に影響しているかを検討するために、クロマチン免疫沈降を行ったサンプルを次世代シーケンサーで解析することで、低酸素状態でjmjd1aがゲノムのどのような領域に結合しているか解析する。上記二つのゲノムワイドな解析から、jmjd1aのターゲットとなる遺伝子の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に行う予定であったノックアウトマウスを用いた実験を先に行ったため、助成金使用計画に変更が生じた。
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