研究課題
本研究では血管細胞のエピジェネティクスに着目し、VEGF阻害治療への反応性低下のメカニズムを解明する。ヒストンH3K9の脱メチル化酵素であるjmjd1aはHIF遺伝子の修飾によりVEGF発現制御に関わることが知られているが、jmjd1aノックアウトマウスの網膜血管系を観察した。まず、正常酸素下における網膜の血管成長程度の比較をjmjd1a欠損マウスとwild typeで行った。Image Jのangiogenesis analyzer ( Carpentier ,2012 )を用いて、生後5日、生後12日、生後17日、5週齢において血管密度や血管長など比較したが、網膜全面での有意な差は認められなかった。一方、小領域においてはjmjd1a欠損マウスにおいて血管径の拡大、毛細血管の消失がみられ、周皮細胞との共染色によりpericyte/endothelial cell比が増加していた。次にjmjd1a遺伝子欠損マウスを用いて、網膜における新生血管を定量するためにOxygen Induced Retinopathy model (OIR model)を作成した。その結果、非欠損マウスと比較してjmjd1a遺伝子欠損マウスでは新生血管の統計学的に有意な抑制が認められた。また無灌流領域において有意差は出ていないものの、jmjd1a遺伝の子欠損マウスでは低下傾向を認めていた。jmjd1a機能が網膜血管形成に影響を及ぼす可能性が示唆されたが、網膜全体の血管面積ではwild type マウスとの差が見られなかったことより、血管形態、血管成熟過程に影響を及ぼす可能性がある。今後電子顕微鏡による微細形態観察やアストロサイトなど他の網膜内細胞との結合についての検討を行う必要がある。低酸素網膜症モデルでの新生血管の減少は従来から言われているjmjd1aのHIF1転写活性への影響を介してVEGFを低下させている可能性や上記の網膜血管構築への影響が原因として考えられる。今後網膜遺伝子解析やタンパク質アッセイ、免疫染色による形態解析を通じてそのメカニズムをあきらかにする。
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