研究実績の概要 |
本年度は、Shumiya Cataract Rat (SCR)の水晶体上皮細胞 (LEC)における遺伝子発現変化の網羅的解析をおこなった。SCRは、約66.7%にラノステロール合成酵素(LSS)の変異により白内障を発症する遺伝性白内障モデルラットである。LSSの変異を、3-4週齢 SCRの尾より抽出したジェノミックDNAをもちいたPCR法により同定し、白内障群(Cat+)、非白内障群(Cat-)に選別した。5週齢のSCRの白内障を有するLEC(Cat+ LEC)と有しないLEC(Cat-LEC)をのサンプルからTotal RNAを抽出後, Affymetrix- GeneChip Arrayを用いて, 網羅的な遺伝子発現変化を解析した。また、5, 8,10週齢のSCR LECのTotal RNAを抽出し、マイクロアレイで同定されたいくつかの遺伝子について、リアルタイムRT-qPCR法により発現変化を確認した。 マイクロアレイ解析の結果、Cat+群ではCat-群と比較して約100 geneに2倍以上の発現減少がみられた。その中でも白内障に特に関連が高い遺伝子として、Major intrinsic protein of lens fiber (MIP, Aquaporin0), deoxyribonuclease II beta (Dnase2b), heat shock protein B1 (Hspb1) , crystallin,γ Dの発現減少に注目した。Real time PCR法でも、5, 8, 10週齢のSCRのCat+LECで、上記4遺伝子の発現減少が確認された。それらは、水晶体の線維分化、シャペロン活性、酸化ストレスの減少、静水圧の維持に関与しており、LSS変異に続発するそれらの発現低下がSCR白内障を誘発している可能性があることが明らかになった。
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