研究課題
加齢黄斑変性症は、神経網膜外側にある脈絡膜毛細血管板の変容より神経網膜を障害する中途失明疾患であり、脈絡膜毛細血管板の維持には色素上皮細胞より分泌される血管内皮増殖因子(VEGF)が関与する。我々は脈絡膜低形成の表現型を示すAldh1a1(Aldehyde Dehydrogenase 1a1)欠損マウスの解析を進めている。若年期(2ヶ月齢)では脈絡膜以外の部位に形態学的変容は見られないが、老齢に至るまでの表現型解析を行い以下の結果を得た。①老齢マウスにおいて網膜色素上皮層の萎縮や視細胞外節部分の断片化など、形態学的変容が認められた。また、電子顕微鏡像により、色素上皮細胞が薄層化しており空隙が認められた。また、免疫組織化学的解析ではRPE生理活性マーカーの発現量低下もしくは異所的な局在が認められた。これらの萎縮型加齢黄斑変性に見られる病態であった。また、壮年期(10ヶ月齢)において同様の解析を行った所、大きな形態学的変容は認められなかった。②網膜電図(ERG)を老齢マウスおよび壮年期マウスで測定を行い、双方のマウスにおいて網膜電位応答の減弱が認められた。③老齢マウスおよび壮年期マウスにおいて視運動性反応の定量解析を行った。老齢マウスでは欠損マウスにおいて視運動性反応の有意な減少が認められたが、壮年期マウスでは野生型マウスと同等の応答を示した。④Aldh1a1欠損マウスの網膜色素上皮細胞および神経網膜のRNA-seq解析を行った。変性が進行していない壮年期マウスのRPEおよび神経網膜のmRNA発現について解析したところ、RPEにおいてはAMD関連の既知のリスク因子の有意な変化を認め、神経網膜においては炎症系・ストレスマーカー因子の有意な上昇を認めた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に即した実験・解析を進める事ができたため。
RNA-seqで有意な発現変化を示した遺伝子について機能解析を進める。
研究計画の実験動物の搬入手続きが年度内に完了できなかったため、次年度に使用する。
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