研究課題/領域番号 |
17K11472
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
峯岸 ゆり子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 分子細胞生物学研究部, 研究員 (20621832)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Leber先天黒内障 / LCA / ノックインマウス / ゲノム編集 / CRISPR-Cas9 |
研究実績の概要 |
2018年度の検討から、Leber先天黒内障原因遺伝子であるCct2遺伝子上において、1塩基欠損により376番目アミノ酸からフレームシフト変異が起こり、400番目で終止コドンとなるR376Vfs*25ノックインマウスを獲得することができた。この変異はT400P遺伝子変異と同等のインパクトを持つ変異であることが、申請者の先の分子生物学的検討、およびゼブラフィッシュモデルでの検討から想定される。T400のアミノ酸変異はCCT2タンパクの構造に大きく影響し構造崩壊することがわかっており、この部位に変異が入ることでCCT2タンパクの発現自体が強く抑制されることから、今回得られたR376Vfs*25ノックインマウスにおいてもT400P変異と同様低低発現となることが示唆された。上記の理由から、T400Pノックインマウスと同等としてR376Vfs*25を以降の検討に用いることとした。R376Vfs*25ノックインマウスに関しては、F1世代が数匹確保できているものの、F0世代からのファウンダー樹立時と同様、Cct2の変異が産出・哺育など周産期に負の影響をもたらしている可能性が否定できず、繁殖が困難であった。現在バッククロス交配を拡大し、次世代マウスの確保に努めているところである。ヒト変異と完全相同であるR516Hノックインマウスについては現在までにC57BL/6Jマウスラインとのバッククロス交配によりコロニーを拡大し、4世代目まで交配が進んでいる。現在、4世代目のR516Hのヘテロ個体同士の掛け合わせから、R516H変異をホモで有する個体と、その同腹産仔の野生型マウスをコントロールに維持しており、経過的眼底観察から網膜への影響について個体レベルでの検討を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書にある通り、初年度にR516Hノックインマウスの作製を達成しており、得られたマウスのコロニーを拡大することができた。T400P変異に関しては個体発生自体におけるその変異インパクトの大きさ故、ノックインマウスは得られなかったものの、T400Pと同等変異と考えられるR376Vfs*25ノックインマウスを樹立することができている。現在はR516Hホモ個体の眼底観察を行なっているところであり概ね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
近年、同一遺伝子内であっても異なる部位の変異であると疾患の種類や、疾患の重症度などが大きく異なることもわかりつつあり、複合ヘテロ接合様式を取るCCT2遺伝子のT400P/R516H変異のうち、どちらがどのように、どの程度の割合でLCAの発症に寄与しているかはまだ未解明である。従来、複合ヘテロ接合は常染色体劣性遺伝と同義であるかのように捉えられて来たが、詳細な検討はされて来ておらず、本研究において、R376Vfs*25変異およびR516H変異をホモで有する個体を劣性遺伝様式として網膜病態へのインパクトについて明らかにしつつ、さらに最終的にはヒトLCAと同様にR516H変異/ R376Vfs*25変異を複合ヘテロ接合で有する個体を獲得し、その網膜病態について解析することでヒトLCA発祥と病態機序について明らかにしていきたい。また、ヒト患者と同様の複合ヘテロ接合がもたらす網膜への影響についてより正確な検討を行うため、T400Pノックインマウスの作製についても再度ゲノム編集法を用いて試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲノム編集によるノックインマウス作製において、目的のT400P変異を有する個体の出生率が変異の影響が大きいため、極端に悪かったことから2019年度にリトライする可能性を加味し、一部を繰り越した。
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