研究課題
本研究の目的としては、ヒト多能性幹細胞を用いて角膜をはじめとする眼組織の発生機構を解明することを目的としている。本年度においては、我々の開発した眼組織誘導技術(SEAM法)を用いて、眼発生に対する①各種阻害剤等および、②ECMの影響について詳細に検討を行った。①については、特にBMPやTGFBシグナル阻害によってSEAM形成と角膜上皮原基発生が阻害されることが明らかとなった。その他のシグナル伝達の関与を明らかにするために、さらに低分子化合物、サイトカイン添加の影響についてp63遺伝子ノックインiPS細胞を用いた検討を行った。その結果、Factor-X阻害剤を添加することでp63+/PAX6+の角膜上皮原基が消失することが示された。現在、BMPシグナルおよびこのシグナル伝達が実際の眼発生にどのように寄与しているのかについて詳細な検討を行っている。②ECMに関しては、昨年度までに、ラミニン511-E8断片が細胞足場として、眼発生・角膜原基発生に重要であることを確認し、さらにラミニン332-E8断片は角膜上皮原基発生を促進することを明らかにした。これらは角膜上皮が発生期において足場として利用している基底膜ラミニンであったことから、天然の足場は正常な眼発生に重要であることが示唆された。本年度においては、さらにin vitro眼発生の際に形成する同心円状の帯状領域(=SEAM)形成メカニズムについて検討を行った。解析の結果、ラミニン511上においては、同一コロニー内において、中央部の神経外胚葉分化と周辺部の表面外胚葉分化の2方性分化が起きており、このことが初期SEAM形成の重要なイベントであることが明らかとなった。さらにこれらの分化が、コロニー内物理的圧力の偏りにより生じる転写共役因子のYAPタンパク質の局在変化により生じている可能性が示唆された。これらの結果について、論文発表(Shibata S, Hayashi R et al. Cell Rep. 2018)およびプレスリリースを行った。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに、①液性因子、②ECMによる眼組織・角膜上皮発生への影響について調べることが出来た。特②に関しては論文発表およびプレス発表を行った。
本年度もほぼ計画通り研究を推進することが出来た。来年度においては特に①の液性因子と角膜原基発生について研究を進め、論文化を目指す。
すべて 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 9件)
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