研究課題
本研究の目的としては、ヒト多能性幹細胞を用いて角膜をはじめとする眼組織の発生機構を解明することを目的としている。本年度においては昨年度に引き続き、我々の開発した 眼組織誘導技術(SEAM法)を用いて、眼発生に対する各種阻害剤やECMの影響を調べ、角膜及び角膜以外の発生機構の解明を行った。これまでに明らかとしたBMP/TGFBシグナル以外について詳細に検討を行うために、p63-EGFPノックインiPS細胞を用いた検討を行った。これまでに、シグナル伝達に関わる因子Xの阻害剤が、角膜上皮原基の発生に関与していることを示したが、因子X阻害に加えてBMPが協調的に作用することで眼表面外胚葉(角膜上皮原基)の発生が起こることを明らかとした。さらに、因子Xを阻害する分子がSEAM中の神経外胚葉領域において高発現していることを明らかとし、それら分子に対する中和抗体を添加することで、眼表面外胚葉発生が抑制されることを確認した。このことからBMPシグナルに加え、眼杯/神経に由来する因子が協調的に働き、眼表面外胚葉の初期発生に寄与していることが示唆された。さらに角膜上皮発生に関連する結膜上皮や神経堤の発生機構に関する研究にも着手した。角膜上皮と同様に眼表面外胚葉に由来する結膜上皮ではあるが、通常のSEAM法においてその発生は抑制されている。そこでSEAMを眼発生モデルとしてその発生分岐に関わる因子について検討したところ、いくつかのサイトカインが結膜上皮方向への分化を促進することを見出した。また神経堤については、眼神経堤マーカーPITX2をEGFPで標識したPITX2-EGFPノックインiPS細胞株を新たに樹立し報告した(Okubo T, Hayashi R et al. J. Biol. Chem. 2020)。これを用いることで眼神経堤の発生機構について探索することが可能となった。
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