緑内障に代表される網膜疾患において、その網膜神経節細胞死の機序については十分に解明されていない。申請者らは網膜神経節細胞死に小胞体ストレス負荷を介した機序が関与しているという仮説に基づき研究を進め、その網膜障害時に小胞体ストレスが誘導されることを初めて明らかにした。さらに、小胞体ストレス細胞死を抑制する遺伝子の解析から、強力な細胞保護作用を有する神経分泌タンパク質であるVGF nerve growth factor inducible (VGF)を見出した。そこで、培養網膜神経節細胞を用いて網膜障害における各種VGF ペプチドの効果およびその機序を解明し、新規治療薬につなげることを目的として以下の実験を行った。 本研究課題において、網膜神経節細胞に対するVGF の直接作用を明らかにするために、ラット培養網膜神経節細胞及びヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)より分化誘導した網膜神経節細胞を用いてVGFペプチドの作用を検討し、TLQP21及びAQEE30に神経突起伸長作用があることを明らかにした。さらに、より短鎖の既知及び新規のVGF由来ペプチドの神経突起伸長作用を検討し、8種類のVGF由来短鎖ペプチドにおいて神経突起伸長促進作用が認められることを明らかにした。そのいくつかは脳由来神経栄養因子(BDNF)の神経突起伸長作用よりも強かった。
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