研究課題
角膜上皮、口腔粘膜上皮、鼻腔粘膜上皮などの複数上皮を用いた培養粘膜上皮による再生医療的治療方法を確立し、生物学的な培養上皮および眼表面に異所的に生着した上皮分化や増殖能について検討した。新規培養方法としてfeeder cellのない培養方法を確立し口腔粘膜上皮の細胞分化や増殖能について検討した。異所性に生着した口腔粘膜上皮はケラチン発現プロファイルやPAX6遺伝子発現などは本来の細胞特性が維持されており角膜上皮、結膜上皮、杯細胞への細胞分化変化は誘導されず、また血管新生は炎症反応と連鎖して誘導が維持されていた。培養口腔粘膜上皮にはp75陽性細胞が含有されており、長期的な増殖能が示唆された。培養口腔粘膜上皮移植による結膜嚢再建術の長期予後は75%で改善効果が観察されたが、瘢痕性角結膜疾患の25%では上皮障害や原疾患の再燃による炎症により瘢痕化が進行し培養口腔粘膜上皮移植による再生効果が得られない症例が存在した。また培養口腔粘膜上皮移植での再建後には血管新生は誘導されるが、羊膜基質より上方には神経再生は認められず神経麻痺的な環境が長期存在した。2期的再建後の長期臨床予後は8眼中4眼(50%)で二段階以上、3眼で0.1以上の良好な視力を維持できた。2眼(25%)において、遷延性上皮欠損または角膜感染に続く角膜混濁のため再移植を施行し、遷延性上皮障害および続発緑内障が視力回復予後不良のリスクファクターであったが、異所性生着した自己培養口腔粘膜上皮により拒絶反応は高い確率で回避することが可能であった。
3: やや遅れている
難治性眼表面疾患に対する培養口腔粘膜上皮移植や培養角膜上皮移植の変化や生物学的および分子生物学的解析は進行しており、2期的再建後の10年以上にわたる長期予後や培養口腔粘膜上皮移植後の結膜嚢変化などについてはデーター集積ができている。また鼻腔粘膜上皮の培養システムの確立や新規にfeeder cell freeでの培養方法も確立されてきたが、涙腺等の培養システムに関しては進行していない。また複合的な移植効果についても解析研究が実施できていない。
培養口腔粘膜上皮移植後の長期生着状態の解析や臨床経過を評価していく。また共焦点顕微鏡を用いた神経再生や細胞分化を解析する。異所性に再生した口腔粘膜上皮や鼻腔粘膜上皮の特性をさらに解析し、複合的な粘膜上皮による眼表面再建法の実施にむけた基礎データーの解析を実施していく。
予定使用額より当該年度使用額が下回り、最終年度での学会旅費等に補てんする計画とした。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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