研究課題
培養粘膜上皮移植は難治性眼疾患に対する再生医療を用いた新しい治療法として開発を行ってきた。角膜輪部や口腔粘膜上皮より幹細胞を含む上皮成分のみを抽出し、羊膜基質上で効率的に増殖させ、細胞分化を誘導することによりin vivoに近い重層上皮シートを作成できた。培養口腔粘膜上皮と培養角膜上皮ではそれぞれの上皮特有の細胞特性を維持している一方、MUC16遺伝子にみられるような培養状況のみで誘発される遺伝子群が存在する。角膜上皮細胞リネージに関わるPAX6遺伝子などは培養口腔粘膜上皮では発現誘導されない。口腔粘膜上皮基底膜には抗血管新生作用を持つTSP-1発現がなく、角膜上環境において血管誘導が生じる。角膜基質上に伸展する口腔粘膜上皮は無血管状態を維持することが可能であった。これらの結果より臨床応用においては抗VEGF抗体点眼や角膜実質移植の併用により、角膜組織により近い透明性の再生が可能となると考えられた。培養口腔粘膜上皮シート内にはprogenitor cellとしてp75陽性細胞が存在し、眼表面においてもその細胞特性と細胞供給が長期的に維持されることが分かった。さらに幹細胞含有率を選択的に上げることでより増殖活性が必要な眼表面への応用が期待される。また眼表面再建術として眼表面における涙液・角膜実質細胞・角膜神経などの組織構成要素により口腔粘膜上皮細胞に特有の遺伝子発現を持ちながらも角膜組織の代用となる組織構築を再生することができた。また鼻粘膜上皮では杯細胞の誘導が可能であり、MUC5ACの発現が誘導された。角膜上皮と代用自家組織である口腔粘膜・鼻粘膜上皮を上皮シートとして培養増殖・分化誘導できたことで、さまざまな難治性眼表面疾患に対応した治療戦略への展開が可能となった。
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