研究実績の概要 |
Kelch-like ECH-associated protein 1 (Keap1)によって調整されるNuclear factor-E2-related factor 2 (Nrf2)は抗酸化ストレス分子の誘導に作用する重要な転写因子として知られている。本課題ではぶどう膜炎の病態におけるNrf2分子の作用について検討するため、1)Nrf2活性化剤であるジメチルフマル酸(DMF)投与による実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(EAU)の抑制効果、2)Nrf2活性化剤Triterpenoidsである2-cyano-3,12-dioxooleana-1,9(11)-dien-28-oic acid (CDDO)によるEAUの抑制効果、2)Nrf2 遺伝子欠損マウス(Nrf2 KOマウス)を用いてEAUを誘導し、野生型マウス(WTマウス)とNrf2 KOマウスとEAUの重症度の比較からEAUにおけるNrf2分子の関与について検討を行った。 1)についてはEAUを誘導したルイスラットにDMFの内服投与を行いEAUの抑制効果を検討したが、両群間に前眼部炎症スコアの有意な差はみられなかった。2)についてはEAUを誘導したラットにCDDOを腹腔内投与しEAUの抑制効果を検討したが前眼部炎症スコアに有意差はみられなかった。3)についてはNrf2KOマウスとWTマウスで病理組織像を検討したところ、Nrf2KOマウスにおいて網膜、硝子体中への炎症細胞の著名な浸潤、網膜組織破壊が高度にみられた。EAU病理スコアの比較では、有意差はなかったもののNrf2KOマウスにおいて高い傾向を示した。これらの結果よりNrf2活性化剤の抗炎症効果はみられなかったものの、Nrf2KOマウスにおいて病理組織像の重症化がみられたことからNrf2を介した抗酸化ストレス機構がぶどう膜炎の病態に関与している可能性が示唆された。
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