研究課題
当研究室で作製したヒト虹彩由来iPS細胞から網膜神経幹/前駆細胞を誘導し、さらに既報の神経節細胞への細胞凝集培養法による分化誘導を行ったところ、細胞凝集体表面からのみ神経節細胞マーカーであるBrn-3bや神経細胞マーカーであるNeurofilament H、Tubulin-beta3などを発現する細胞に分化誘導することができた。これらの分化誘導した細胞を電気生理学的手法(パッチクランプ法)を用いて解析したところ、成熟した網膜神経節細胞に発現するナトリウム/カリウムチャネルのシグナルが検出された。しかし、この手法では細胞凝集体の表面の細胞は神経節細胞に分化誘導されるが、細胞凝集体内部の全ての細胞は神経節細胞に分化誘導されていなかった。そこで、二次元培養法での神経節細胞への新たな分化誘導法の検討を開始した。現在、二次元培養法でも神経節細胞へ分化させることができる条件を絞りつつある。一方、昨今の再生医療研究では、個々の細胞レベルでの分化誘導・機能性獲得から三次元・立体構造での分化誘導に注目ポイントがシフトしている。そこで、虹彩由来iPS細胞と虹彩由来幹/前駆細胞を用いて、非接着(浮遊)培養および回転浮遊培養を行い、神経網膜細胞への分化と網膜層構造の再構成についての実験を先行して実施することとした。虹彩由来iPS細胞、または虹彩由来幹/前駆細胞で形成された細胞凝集体を分化誘導培地にて非接着(浮遊)培養および回転浮遊培養を行ったところ、内腔が形成され細胞層様の構造を呈する細胞塊が形成された。現在、詳細な分析を行っている。
3: やや遅れている
学内研究施設の改修、自分の研究室の移動等、年度初めには予定されていなかった案件が発生してしまったため、研究実験環境および実験時間が当初予定していたより、かなり確保できない状況となってしまった。ただし、確保できた実験時間において実施できた研究内容および進捗は、それ相応の内容であり、新しく得られた知見は、学会で発表することができた。
平成30年度においても、まだしばらくの間は、研究環境の改修工事、研究室の移動のため、実験・研究の時間が拘束されると思われるが、順次、研究環境が落ち着いていくため、全力をあげて研究の進捗に努める。平成30年度では、より安定した虹彩由来網膜神経幹/前駆細胞を維持培養できる培養条件の確立を目指し、細胞の接着要素(ディッシュのコーティング条件)や各種阻害剤などを用いた検証を行う。虹彩由来幹/前駆細胞と虹彩由来iPS細胞を用いて網膜神経幹/前駆細胞の細胞表面マーカーを網羅的に解析し、さらに新しい細胞表面マーカー(幹細胞マーカー)の探索を行う。光応答性視細胞への分化誘導条件を探索する。網膜神経幹/前駆細胞にOtx2遺伝子を強制発現,またはOtx2タンパク質を糖鎖(コンドロイチン硫酸)にて細胞に取り込ませるなどの分化誘導方法を検討する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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