研究課題
研究代表者の山本が作製したヒト虹彩由来iPS細胞から網膜神経幹/前駆細胞を誘導して、さらに網膜神経細胞への分化誘導を行い、神経系細胞で特異的に検出される遺伝子・蛋白質の発現を確認することができた。さらに機能性を有する神経細胞としての評価を行い、パッチクランプ法にてナトリウムチャネルのシグナルを検出した。これらの結果は、第49回日本臨床分子形態学会総会にて発表し、奨励賞を受賞した。現在、原著論文およびReview論文を執筆中である。ヒト虹彩由来細胞を用いた組織幹細胞の維持培養法については、ROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase:Rho結合キナーゼ)阻害剤を用いることでかなり改善することができたが、適切な濃度設定と添加期間について、一部再現性が不安定な結果であったことから、詳細な実験条件の再設定を行っている。虹彩由来iPS細胞と虹彩由来幹/前駆細胞を用いて、静置培養にて細胞凝集体を形成させた後、分化誘導培地にて非接着(浮遊)培養および回転浮遊培養を行ったところ、内腔を形成する細胞層様の構造を呈する細胞塊および充実性の細胞塊の2種類が形成された。内腔を形成する細胞塊は、水晶体上皮細胞でみられるalfa-A crystallineを発現する単層細胞がみられた。また、ヒト虹彩由来iPS細胞を用いて、Self-formed Ectodermal Autonomous Multi-zone method(SEAM法)にて、in vivoの前眼部および後眼部の発生・発達を模倣する外胚葉系統の異なる種類の細胞が形成されることを確認した。さらにヒト虹彩由来iPS細胞は、iPS遺伝子パネル検査において、外胚葉系細胞へ分化誘導しやすい傾向にあることが証明された。
2: おおむね順調に進展している
学内研究施設の改修、自分の研究室の移動等、本研究開始年度の2017年度から本年度の2018年度途中までは予定されていなかった案件が発生してしまったため、研究実験環境および実験時間が当初予定していたより、かなり確保できない状況となってしまった。しかし、2018年度後半から研究環境を確保できるようになったため、確保できた実験時間において実施できた研究内容および進捗はそれ相応の内容であり、新しく得られた知見は学会で発表することができた。
実験の進捗と平行して、得られた研究成果の論文化を急いでおり、2019年度中旬までには論文化することを目標としている。特にSEAM法で培養することにより分化してくる神経系細胞に関する解析は、注目すべきポイントであると考えており、この解析を中心に従来から実施している幹細胞維持培養法、ディッシュコーティング条件の検討、阻害剤との組合せ、網膜神経幹細胞の網羅的細胞膜表面蛋白質の解析(新規幹細胞マーカーの探索)なども行っていく。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (3件)
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