研究課題/領域番号 |
17K11497
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
三木 淳司 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90447607)
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研究分担者 |
山下 力 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (00515877)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 同名半盲 / 網膜神経節細胞 / 対光反射 / 網膜神経線維層 / 脳梗塞 / 後頭葉 / 視神経萎縮 / 経シナプス変性 |
研究実績の概要 |
これまで、外側膝状体よりも後方の視路障害によって生じる同名半盲患者では、先天性または出生後早期の脳障害症例を除いては、シナプスを越えて網膜神経節細胞(RGC)まで障害が及ぶことはないとされていた。しかし、我々は複数の後頭葉梗塞後の同名半盲患者において、脳障害後の数年以内に視野欠損に対応した黄斑部網膜神経節細胞複合体(GCC)厚の菲薄化がみられたことを報告した。GCC厚の測定では、視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚の測定よりもRGC障害の検出力が高かった。半盲側の網膜神経節細胞層+内網状層厚も、健側や正常眼に比べ有意な菲薄化を示した。これらの菲薄化は網膜周辺より中心網膜で顕著であり、経過期間と有意に相関していた。さらに、半盲側のGCC 厚、 正常対照群との比較に基づくmap異常領域面積においては、視野障害との有意な関連があった。また、後頭葉病変発症直後のGCC厚の変化が明らかでない症例の経時的変化を検討した結果、発症後2年程度で明らかな菲薄化が出現していた。このような菲薄化では、RGCの経シナプス逆行性変性の関与が考えられるが、より早期に網膜厚の変化がみられる症例では、脳血管障害による前部視路への直接の影響がある可能性も否定出来ない。一方、古典的な対光反射経路には後頭葉の関与はないとされているが、実際には後頭葉障害症例でも半盲性瞳孔強直や脳病変の対側眼の対光反射減弱などの対光反射異常が検出される。このような網膜や対光反射の変化のメカニズムの解明のためには脳画像解析が必要となる。そこで、我々は同名半盲患者の視野障害の責任病巣の位置を標準脳上で同定し、グループデータ解析を行うことにした。すなわち、網膜内層の菲薄化の有無、および、対光反射異常の有無により、グループに分けて、それぞれの群の責任病巣の差異を調べることによって、脳病変の網膜や対光反射への影響を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機器の購入計画がやや遅れているが、研究自体は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象患者総数は順調に増加してきているが、網膜厚の経過、すなわち、不変(あるいは頭打ち)・悪化などの基準によって数グループにわける必要があり、統計学的な解析に耐えられる症例数を収集するのにはかなりの時間を要している。そもそも、何年で網膜厚の変化がplateauに達するのかについてはヒトでは縦断的なデータが得られていないので、現時点では不明なのである。グループ間の比較のためには各グループにかたよりなく患者が分布することが望ましいが、これもいまだに先行研究がなく、手探りの状態である。また、グループ分けにもいくつかの基準が適用できるので、今後、複数の脳画像解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器の購入が次年度にずれこんだため、初年度の使用額が少なくなった。次年度使用額は次年度の請求額と合わせて機器購入をする予定である。
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