研究課題/領域番号 |
17K11499
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
野呂 隆彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (00349606)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マーモセット / 正常眼圧緑内障 / 神経栄養因子 / 脳脊髄液 / 自然発症 / 酸化ストレス / 篩状板 |
研究実績の概要 |
日本人最大の中途失明原因である緑内障は網膜神経節細胞の変性によって引き起こされる神経変性疾患であるが、外側膝状体や第一次視覚野などの高次視覚中枢まで変性が波及することが知られている。また、緑内障の発症原因には多くの因子が関与するとされるが、眼球以外の因子の詳細はいまだに解明されていない。そこで本年度は、自然発症した正常眼圧緑内障マーモセット群と老齢コントロール群において頭部・Magnetic Resonance Imaging(MRI)を撮影し、Voxel Based Morphometry法(VBM)によって灰白質の体積を比較したところ、第一次視覚野領域における有意な差を見出した。この結果に基づき、外側膝状体や第一次視覚野領域の組織学的検討を行ったところ、外側膝状体のM細胞層と、第一次視覚野の4C領域における有意な細胞数減少が認められたが、外側膝状体のP細胞層には有意な差がなかった。また、眼球網膜を用いた免疫染色による組織学的検討では、網膜内層と視神経乳頭部において脳由来神経栄養因子(BDNF)とその受容体であるTrkBの発現が正常眼圧緑内障群で有意に減少していることを見出した。また、採取した血液を用いて酸化ストレスの指標である4-HNEをウエスタン・ブロッティング法で調べたところ、正常眼圧緑内障群で有意に上昇していることがわかった。これらの所見から、マーモセットに発症した正常眼圧緑内障はヒト緑内障に酷似した病態を示し、その発症メカニズムにBDNFとその受容体の性状、および全身の酸化ストレスが関与する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常眼圧緑内障マーモセットの頭蓋内変化だけでなく、血液サンプルの解析と検討が順調に終了し、多面的な解析を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
マーモセットにおける眼や脳のIn vivo ライブイメージング法が確立されているので、今後は篩状板部に直接作用する薬剤の探索と、Dock3や転写活性因子の調整をおこなうことによって、網膜神経節細胞軸索の再生治療を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する消耗品など、購入に関して可能な限り節約を行ったため。次年度と合わせて主に試薬類などの消耗品に使用する予定である。
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