研究課題
昨年度の研究において、マイクロアレイデータを解析し、重症アレルギー性眼疾患患者由来の線維芽細胞で発現変動し、かつペリオスチン遺伝子発現と相関が高い遺伝子より、エピジェネティクスを直接的に制御可能な遺伝子を探索し、5つの候補遺伝子が新たに同定された。そこで、これら5つの遺伝子についてペリオスチン遺伝子の高発現のメカニズムに寄与しているかどうか検証を行った。5つの候補遺伝子について過去の文献等を詳細に調べ、疾患由来結膜線維芽細胞で発現増強していたヒストン脱メチル化因子Aと、疾患由来結膜線維芽細胞で発現減弱が確認されたヒストンメチル化因子Bに着目した。これらは、共通の転写抑制性のヒストンH3リジンをメチル化・脱メチル化する酵素であることが明らかになっていること、ある種の組織構成細胞においてIL-1やTGF-βにより発現変動することが報告されていることからも、有望であると考えた。まず、項目3においてヒストン脱メチル化因子Aに対する特異的siRNAを3種類設計し、Lipofection法により疾患由来結膜線維芽細胞へ導入を行った。ヒストン脱メチル化遺伝子Aの遺伝子発現をqPCRで比較したところ、導入72時間後に無刺激状態の疾患由来結膜線維芽細胞において70%程度減弱させることができた。興味深いことに、siRNA導入時のペリオスチン遺伝子発現を同様に確認したところ、低下傾向がみられることがわかった。さらに、ペリオスチンプロモーター領域におけるヒストン修飾の状態をクロマチン免疫沈降法(ChIP)により検討したところ、転写抑制性のヒストンH3リジンにおけるメチル化が増加していることがわかった。以上より、ヒストンのメチル化状態にかかわる酵素が疾患由来結膜線維芽細胞におけるペリオスチン高発現に重要な役割をもつこと、これを制御することでペリオスチン高発現を抑制できる可能性があることがわかった。
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