研究課題/領域番号 |
17K11505
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高安 肇 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10359614)
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研究分担者 |
増本 幸二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343329)
五藤 周 筑波大学, 医学医療系, 講師 (80598889)
瓜田 泰久 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90361352)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 先天性横隔膜ヘルニア / ナイトロフェン / ラットモデル / 胎児薬物治療 / 肺低形成 / 肺高血圧 |
研究実績の概要 |
課題番号25462769平成25年度 基盤研究(C)「エリスロポエチンの先天性横隔膜ヘルニアにおける肺高血圧への有用性の検討」においてナイトロフェン投与による先天性横隔膜ヘルニアのラットモデルにおいて血管平滑筋の異常収縮に関与するタンパク質RhoがCDHにおける肺高血圧に関与している可能性を、RhoAの同モデル肺血管における過剰発現により見いだした(Takayasu H,Masumoto Kら、J Pediatr Surg.2015)。またモデルの肝臓でEpo産生が低下しており、さらに腎臓における産生低下も認めた(Takayasu H, Hagiwara K, Masumoto K: Suppressed Erythropoietin Expression in a Nitrofen-induced Congenital Diaphragmatic Hernia. Pediatr Pulmonol. 2017)。 Rhoキナーゼ阻害剤やエリスロポエチンが先天性横隔膜ヘルニアの治療につながる可能性が考えられ、同モデルを作成し、その効果を検討することとした。上記の研究プロジェクトの通りにモデル作成を開始したたが、しばらくは一匹も横隔膜ヘルニアの胎児を認めなかった。業者と相談のうえ、ナイトロフェンを投与する日を一日早め、一腹(通常10から15匹胎児を妊娠)あたり2から7匹と少しずつ横隔膜ヘルニアの胎児を認めるようになった。全ての胎児が子宮内死亡していることや、右の横隔膜ヘルニアの胎児を認めることもあった。ナイトロフェン投与が一日前へずれると子宮内死亡や、右の横隔膜ヘルニアが出来ることは以前より知られている。当大学の動物センターで動物を新規に搬入出来るのは、金曜日に限られているため、当方で妊娠ラット作成の自由がきかず、多少効率が落ちるこの条件で実験を継続する必要があることが改めて分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
医師不足(小児外科医不足)が深刻であり、また大学の耐震工事の影響で、実験室の整備が大幅に遅れた。しかし、2017年の夏から秋にかけて工事後の実験室の整備だけは進め、環境は整えた。この遅れを取り戻すため、2018年1月より3月までの間、診療の負荷を軽減してもらうように診療科内で調整をし、それにあわせて当大学の医学生を3名、実験助手として雇用した。今年度はモデルの作成再現に難渋し、ラットの麻酔や解剖、横隔膜ヘルニア有無の判断の行程を繰り返すこととなった。前回のプロジェクト(課題番号25462769平成25年度 基盤研究(C)「エリスロポエチンの先天性横隔膜ヘルニアにおける肺高血圧への有用性の検討」)と全く同様の投与量、タイミングで母胎ナイトロフェン投与を行っても、横隔膜ヘルニアが発生しない期間が二ヶ月続いた(母胎10匹を消費)。動物業者に妊娠の確認方法を確認したが、以前と同様であった。ヘルニアにならない胎児の表現系が正常に限りなく近いことから、投与時期が少し後ろにずれていることが考えられ、投与時期を一日早めたところ、横隔膜ヘルニアを有する胎児を認めるようになってきた。 また、臨床面において厚生労働科学研究費補助金:難治性疾患政策研究事業「新生児横隔膜ヘルニアの治療標準化に関する研究、新生児横隔膜ヘルニアに関する実態調査」の班員として、2017年5月に米国シアトルで開催されたアジア太平洋小児外科学会のおりに開かれた国際研究への参加の準備会議に本邦の研究者とともに出席し、国際研究の責任者であるテキサス大学ケビン教授と打ち合わせを行った。「新生児横隔膜ヘルニアの治療標準化に関する国際共同研究」への参加をするよう各施設で準備をしており、倫理委員会に申請中である。この臨床研究で得られる知見とナイトロフェンモデルの基礎実験の橋渡しが出来るよう、一層努力をする必要性を感じている。
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今後の研究の推進方策 |
試行錯誤の期間を過ごしたが、その分、助手の学生が基本手技を繰り返すことになり、十分に手技を獲得してくれた。モデル作成についても良い感触を得つつある。このため、4月以後に申請者の診療業務が多忙となっても今後の研究の速度は落ちることが無いと思われる。助手と連携をとりながら、今後、母胎への薬剤投与やRT-PCR、免疫染色など、予定された実験を進め、少しでも遅れを取り戻すことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実施予定だった実験が研究協力者の都合で延期となったため、平成30年度に当該実験を実施する。
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