研究課題/領域番号 |
17K11509
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
樅木 勝巳 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 教授 (70304615)
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研究分担者 |
藤原 隆 広島文化学園大学, 看護学部, 教授 (30036496)
平山 晴子 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 助教 (40635257)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 二分脊椎症 / モデル動物 / 歩行障害 / 病態解析 / 脊髄奇形 / 運動神経細胞 / 知覚伝導路障害 / 神経細胞発生異常 |
研究実績の概要 |
椎弓の欠損を主徴とする非致死性脊髄奇形である二分脊椎症は,椎弓の欠損状態や奇形箇所の脊髄の状態から病形が区分される。本奇形は、椎弓欠損のみに奇形が限局する潜在性型と椎弓欠損に髄膜あるいは脊髄と髄膜の両方が巻き込まれる嚢胞性型とに区分される。一般に潜在性型は無症状であるが,嚢抱性型は種々の程度の神経障害を示す。これまでの二分脊椎症に関連する研究では,この神経障害の病態は臨床知見に基づいたものがほとんどであり,実験に基づく知見は臨床知見に比べてはるかに少ない。ゆえに,その詳細な病態については不明な点が未だ多く残されている。我々はこれまでに二分脊椎症で見られる神経障害の病態を詳細に解析することを目的として,ヒト二分脊椎症患者に似た後肢運動障害を示す二分脊椎モデル動物を開発,奇形領域の神経細胞の発生異常や神経伝導路形成異常が二分脊椎症に併発する歩行障害を誘発する可能性を示してきた。 本モデルは、人為的に二分脊椎を引き起こすことから本奇形の原因追及ではなく病態解析に目的を特化したモデル動物である。しかしながら、二分脊椎症のうちこれまで潜在型はほぼ再現が可能であったが、嚢胞型は最も重症例である脊椎裂のみ再現可能であった。すなわち、嚢胞型のうち最も例数が多いタイプの二分脊椎症を再現できなかった。今回、ニワトリ胚の二分脊椎処置のタイミングを調整したところ、嚢胞型の二分脊椎の作出に成功した。作出確率は、これまで作出してきた脊椎裂タイプの二分脊椎ヒヨコに比べ、かなり低い。この嚢胞型モデルが示した神経症状は脊椎裂型タイプとほぼ同じであった。これにより、本モデルを用いたヒト二分脊椎症により近いモデルでの病態解析が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、研究分担者の育児休暇もあって当初計画の平成30年度分の計画を前倒して実施した。よって、平成30年度当初計画にあった二分脊椎ヒヨコを使った実験を行ったところ、神経症状が再現しなかったので、まず、この原因を探索した。本モデルでは、3日齢ニワトリ胚神経管のROOF PLATE部に切開を行い作出するが、その位置情報はニワトリ胚の体節を基準としている。この切開位置が徐々に口吻側から尾側方向へズレが見出された。そこで体節に加え、後肢パッドを基準の目安として切開位置の再設定を行うとともに、毎回すべての処置胚背部をデジタルカメラで撮影し、後日、処置位置と神経症状の確認ができるようにした。現在、この方法によって作成した3.5日齢~6.0日齢のニワトリ胚サンプルを得たところにある。また、二分脊椎ヒヨコを用いた後肢骨格筋の神経支配の探索も着手している。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の育児休暇により当初、平成29年度に計画していた電気生理学的手法を用いた運動神経細胞の機能解析を開始する。なお、これまで計画では、脊髄裂タイプの奇形をもつ二分脊椎ヒヨコで実施予定であったが、このタイプに加え、平成29年度の研究で作出可能となった嚢胞型タイプでの実験も加える。これにより本研究データのヒトへの外挿化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の育児休暇取得により平成29年度実施の一部実験を平成30年度に実施するように変更したため平成29年度所要額が当初見込みよりよりも少なくなった。計画所要額と平成29年度実績との差額については、平成30年度に実施する実験に充てたい。
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