研究課題/領域番号 |
17K11525
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
渡邉 稔彦 東海大学, 医学部, 准教授 (50306734)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ω3系脂肪乳剤 / ω3系脂肪酸 / リピドミクス解析 / 短腸症 / 小腸機能不全関連肝障害 / IFALD / 抗炎症効果 / メカニズム |
研究実績の概要 |
1)マウス肝臓脂肪変性モデル・・・6週齢のC57BL6マウスに液体の高炭水化物食を与え、7日、14日、21日で犠死させ、脂肪変性の程度を評価。(東海大学での再評価)肝臓は肉眼的に脂肪投与群で経日的にわずかな黄色調の色調を帯びた。肝臓重量は、経日的に7→14日は1.23倍、14→21日では1.52倍に増加した。血液生化学的には、脂肪投与群の14日目では7日、対照群に比べ変化はなかったが、21日目には肝機能障害を認めた。病理学的にはHE染色で、14日目よりびまん性の脂肪変性を認め、21日では脂肪変性はより重篤となっていた。環境因子による実験結果の差異がないことを確認した。 2)脂肪乳剤の経静脈的投与による治療・・・液体の高炭水化物食を21日与え、大豆油由来(S:Intralipid)、魚油由来(F:omegaven)、総合的(C:SMOFlipid)脂肪乳剤を2.4g/kg/dayのdoseで尾静脈より1日おきに静脈注射を7回(14日間)行った後に犠死させ、脂肪変性の程度を評価した。(東海大学での再評価)肝臓の肉眼的外観はS/F/C群3群ともに黄色調の色調が改善した。肝臓重量は3群ともに治療前より減少した。血液生化学的には肝機能障害は、3群とも正常値まで改善した。病理学的にはHE染色にて、F群では脂肪変性は完全に消失し、S・C群ではびまん性の脂肪変性が見られたが、脂肪滴の縮小が見られ重症度は改善した。環境変化により治療効果の差はなかった。 3)メタボローム解析による活性代謝物の解析・・・脂肪乳剤治療前、治療後3日、治療後7日の3ポイントでリピドミクス解析を行い、脂肪酸代謝物の生成の経時的変化を検討。18-hydroxyeicosapentaenoic acid(18-HEPE)を前駆体とした代謝物はC群やS群に比較するとF群に多い傾向を認めたが、有意差を認めるに至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は国立成育医療研究センター外科から2018年4月に東海大学医学部小児外科に異動となったために、研究基盤を移動する必要があった。東海大学医学部での動物実験に関わる講習や手続きを修了して、本プロジェクトを再開させた。購入するマウスの会社が変わらないようにしたが、環境因子によりマウス肝臓脂肪変性モデルの状態が変化することを危惧して、新たに作成したモデルの脂肪肝の程度を再評価したが、結果は環境変化があっても再現性があることが確認できた。このような異動に伴う変化のため、期待している研究の進捗状況に比べるとやや遅れを来した。
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今後の研究の推進方策 |
環境の変化による脂肪肝のモデルの品質の変化がないことが確認できたため、最終年度は順調な研究の進行が期待できる。 ①保存している検体のin vitroのアッセイを順次行っていく・・・Myeloperoxidase(MPO)活性(肝臓凍結標本を用いて、肝臓への好中球浸潤の指標としてMPO活性を測定)、炎症性サイトカイン測定(RT-PCR 法により、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)、Th1サイトカイン(IFN-γ、IL-2)、およびTh2サイトカイン(IL-4、IL-6、IL-13) の定量) ②メタボローム解析による活性代謝物の解析・・・まだnが少ないため、さらに多くの検体の解析を行い、リピドミクス解析の結果の解釈を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者は国立成育医療研究センター外科から2018年4月に東海大学医学部小児外科に着任となった。東海大学での研究基盤を再構築するために時間を要したため、計画通りに研究が進まず繰越金が発生した。現在、実験は軌道に乗ったため、最終年度に研究経費はすべて計画通り執行できる見通しである。
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