研究課題/領域番号 |
17K11529
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
秋田 新介 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (00436403)
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研究分担者 |
三川 信之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (40595196)
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
秋田 英万 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80344472)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リンパ浮腫 / 超音波 / 定量評価 / DDS |
研究実績の概要 |
【超音波によるリンパ管の描出】超音波を用いて、マウス下肢、腹部、ラット下肢、ラビット耳介、ブタリンパ管の観察を行った。リンパ管の描出が可能であったのはブタ後肢のリンパ節周囲のリンパ管のみであったが、明確な走行の描出と輸入、輸出の別は、造影剤を使用した際にのみ可能であった。一方で、超音波造影剤は2-3μmでは皮下注射ではリンパシステムへの安定した流入は認めず、より小さな粒径のバブルの調節を要するため、バブルの調整の取り組みを開始している。リンパ節構造およびリンパ流は造影剤使用によって、より明確に観察された。 【経皮アクセス】35G針を用いることにより、顕微鏡観察下でのリンパ管への色素及び造影剤の直接注入は容易であった一方で、マニュアル操作では、注入圧の一定化や操作中の漏れの防止などは不十分であり、カニュレーションがより適切である。カニュレーションに際しては、現時点では経皮的に行うことは困難であり、小切開を用い、ラビット耳介、ラット下肢での手技を確立した。 【ナノ粒子を用いた経リンパ管DDS】経リンパ管薬剤投与方法として、カニュレーションの他にリポソーム内への封入を行い、皮下注射によりリンパシステムへの取り込みを促す方法が考えられる。リポソーム化した蛍光色素(DiR)を用い、マウス腹部リンパ浮腫モデルにおけるリンパ運搬能の変化と、リンパ管新生の動態について観察を行った。リポソーム化により、蛍光色素は高いリンパシステムへの滞留性を獲得する一方で、注入部位より第一群のリンパ節を超え、第2群への移動が観察された。また、リンパ管新生による新たな流路が発生した際にも、血液循環系への流出は乏しく、リンパ管系内を運搬されることが観察された。リポソーム化蛍光色素はIVISを用いることでリンパ管系において定量評価が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に行った実験結果から、蛍光色素のリポソーム化と経皮的な投与については、一定の結果が得られた。マウスモデルFoot Padから、鼠経、腋窩をへのリンパ流改変マウスを用い、リンパ流の定量化を確立した。併せて、腹部のリンパうっ滞モデルにおけるリンパ流の再生や、リンパ節移植などの治療介入によるリンパ運搬機能の変化についても検討を加え、リンパ流の変化やうっ滞の改善に伴う所見の変化について検討を開始している。一方で、リンパ浮腫の治療方法としてリンパ管細静脈吻合手術はマウス腹部で施行することは困難であり、本モデルにおいてはリンパ節移植の評価を行うのが現実的な方法とも考えている。リンパ管細静脈吻合手術についてはラビット耳介のリンパ浮腫モデルを用いているが、その定量評価の確立が今後の課題である。 リンパ管細静脈吻合手術についてはラビット耳介のリンパ浮腫モデルを用いているが、ラビット耳介はサイズが大きすぎてIVISでの計測が困難な点が課題である。リンパ管細静脈吻合におけるリンパ流の定量計測を検討したい。 超音波ガイド非切開経皮的リンパ管カニュレーション技術の確立については、複数の課題がある。リンパ管の描出については超音波の解像度に依存するものの、造影による描出力の向上、カニュレーションの確認などの利点は大きく、安定した小サイズのバブルの作成が必要である。また、経皮カニュレーションについては現状のプローベ、市販の留置針の仕様では機器がやや大きく、機器のの開発を本研究の予算内で行うことは困難と考えられた。小切開からのリンパ管確保、カニュレーション技術の確立による確実かつ迅速なアクセス経路の確立を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目指すところはA. 超音波ガイド非切開経皮的リンパ管カニュレーション技術の確立、B. リポソーム化蛍光色素を用いた定量的リンパ機能評価の確立、C. 経リンパ管薬剤投与法の確立と各種リンパ浮腫治療の定量的効果測定、再生側副路の描出である。マウス腹部リンパ浮腫モデルにおける経時的なリンパ流変化の動態を、定量的なリンパ流の評価、病理所見の変化とともに把握する。次に、治療介入による変化を記録し、比較する予定である。現在までの取り組みにおいては、治療介入を行った場合においても、その成果に個体差が生じているため、治療介入の成績に及ぼす因子の解析も併せて必要であると考えられる。さらに、リンパ浮腫治療に有用である可能性のある薬剤はこれまで複数提案せてており、それら薬剤の使用によるリンパ浮腫改善効果について検討予定である。薬剤の治療においては、介入時期、投与量など様々な因子の検討を要する見込みである。また、リンパ浮腫の問題点はリンパの運搬能の低下ではあるものの、慢性炎症に伴う組織の線維化が極めて重要な役割を果たしていると考えられる。組織の線維化についても、各種治療方法における経過の違いを評価し、比較検討したいと考えている。さらに、マウス腹部では十分な検討が困難であると考えられるリンパ管細静脈吻合手術については、ラビット耳介リンパ浮腫モデルにおけるリンパ管細静脈吻合モデルによる評価方法の確立を検討している。 近年の超音波技術、特に高周波の超音波における解像度の発達は目覚ましく、リンパ管の描出について従来のリンパ浮腫評価の概念から大きく進展しつつある。我々の現在使用している機器を本研究の範囲で変更することは困難であると考えられるが、超音波機器の解像度の発達に依存しないアプローチで、リンパ浮腫超音波描出及び、超音波ガイド下リンパ管カニュレーションの確実性と低侵襲性を追求していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度より繰り越しの251円については、少額の消耗物品を購入するよりも、次年度の予算と合算して新たな消耗物品に充てるのが妥当と考えました。
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