研究課題/領域番号 |
17K11530
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
黒田 正幸 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00253005)
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研究分担者 |
窪田 吉孝 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10375735)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前駆脂肪細胞 / 移植 / 輸送 / 加工 |
研究実績の概要 |
申請者らは前駆脂肪細胞にex vivoで治療用遺伝子を導入し、それを患者に移植することで治療用タンパクの体内における持続発現と血中への分泌を原理とした独自の治療研究を進め、再生医療等安全性確保法の下、希少疾患である家族性LCAT欠損症を対象とした第一種再生医療臨床研究を実施中である。この治療技術は他の遺伝子を用いることで数多くの難病に苦しむ患者に応用可能な汎用性の高いものであるが、他の疾患への応用展開には移植用細胞の輸送や移植に関するさらなる技術革新が必須である。本研究では、移植用細胞の特性維持を可能とする保存・運搬さらには移植用の細胞懸濁用カクテルの技術基盤を確立することを目的とする。 H29年度は4℃でヒト前駆脂肪細胞を懸濁状態で少なくとも48時間以上、バイアビリティの低下を最小限にできる細胞懸濁液の基本組成の探索を行った。既報から種々の作用を有する試薬の組み合わせ検討をリンゲル-HSAを基本組成として行ったが、有意にバイアビリティを向上させる試薬は見つからなかった。一方、フラスコに接着状態の細胞のバイアビリティを低温で維持できる溶液に関する既報に基づき、その溶液(メーカーより購入の溶液A、既報に基づきさらに改良されており、その組成は非開示)を検討したところ、リンゲル-HSAに比べて明らかにバイアビリティが向上した。また、溶液Aに加えることでさらにバイアビリティを向上できる候補物質を見出した。H30年度以降は溶液Aを基本組成とした研究を進める予定である。 成熟脂肪細胞由来のccdPAとStromal vascular fraction由来のASCで調製時に発現が有意に異なる脂肪分化関連遺伝子を複数同定した。この結果については新たな脂肪組織を入手し、精査するとともに、培養工程における発現推移を確認することにより、マーカー遺伝子となりうるかどうかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を開始する前の段階で、培養フラスコに接着している細胞のバイアビリティを低温で長時間維持することが可能である溶液が他の細胞系で報告されていた。その溶液について、その改良型(溶液A)を入手し、前駆脂肪細胞懸濁液に適応が可能かどうかを検討したところ、40時間の4℃保存後も80%程度のバイアビリティを維持できることが確認され、これまで用いていたリンゲル-HSAよりも4℃保存でのバイアビリティが明瞭に向上した。リンゲル液への各種試薬(主に低分子化合物)の個別の添加ではバイアビリティの維持効果は十分ではなかった。これらの検討結果から、リンゲル液とは異なる基本組成となるが、溶液Aを基本カクテルとした検討をすすめることとした。 計画立案当初はPRP成分の検討をマウス移植実験で検討する予定であったが、基本組成の変更があったため、そちらの検討が進められなかった。しかしながらその後、基本組成に加えることが可能な候補物質が早期に見出されたことから、マウスでの移植実験に移行できる状態にあると考えている。 また、導入遺伝子としてLCAT、血液凝固第8因子(FVIII)、ネプリライシン(NEP)を予定していたが、別の研究において有力なシーズであることか確認された脳由来神経成長因子(BDNF)を加えて研究を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で溶液Aに対し、バイアビリティや移植効率を上げる候補物質を見出しており、さらなるバイアビリティの向上が期待される。この候補物質について調査の上、特許化について検討する予定である。複数の候補物質を同定していることからその組み合わせに関する検討が必要である。それに加えて移植効率の向上を目指したタンパク性の成分の検討を進める予定である。リンゲル液とは異なる基本組成となるため、溶液Aを基本組成としてマウスでの移植実験を進めることで今後の研究の効率化を図る。 今後の移植実験では全ての遺伝子で実施することは考えておらず、いくつかの遺伝子に絞った検討を計画している。 溶液Aについては海外の臨床試験で被験者に投与されている実績があることから、私たちの遺伝子導入脂肪細胞の臨床応用においても適応が期待できる。今後は移植効率に関する検討をマウス移植実験により評価していく予定である。
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