研究課題
(目的)晩発性放射線皮膚障害として照射後線維化・瘢痕化がある。過度の細胞外基質やコラーゲンの増加が原因であり、それら線維化を抑制できれば、放射線潰瘍といった難治性潰瘍を防ぐことができると考える。本研究では放射線皮膚障害モデルを用いて、肺線維症治療薬ピルフェニドン(ピレスパ:商品名)に、皮膚線維化抑制効果があるか解明を進める。(材料・方法)まずは放射線皮膚障害モデルを作るため、8週齢ルイスラット(体重250~300g)20匹使用した。X線照射装置は、MBR-1520R-3を用いて、厚さ3㎜の鉛に直径2cmの穴を開け遮蔽板とし、ラットの背部に3か所それぞれ10Gy・15Gy・20G放射線を照射した。照射後3・4・5・6日目にメチルセルロース溶液に溶かしたピリフェニドン(ラット経胃用のゾンデを用いて100mg/kg/日)を投与した。そして、7日目・10日目に組織を採取し、H-E染色とマッソン・トリクローム染色にて組織学的に評価した。(結果)コントロール群の1匹以外全て照射後14日以内に死亡した。投与群・コントロール群共に脊椎が円背となり、口の周りに皮膚潰瘍を形成した。放射線照射部の毛の伸びは、照射後7日目まで投与群とコントロール群は肉眼的にも組織学的にも差が無かった。しかし照射後10日目は投与群において、皮膚附属器の再生が見られ、特に10Gyでは組織学的に正常に近い皮膚附属器の再生が見られた。