これまでの実験で表皮が紫外線等によって傷害され、その程度がlocalで修復できないほど重症な場合は一時的に骨髄細胞が表皮に遊走する現象の解析をおこなってきた。遊走した骨髄細胞はCCL17を高発現し、一方傷害された表皮細胞は一時的にCCL17のレセプターであるCCR4を発現していた。これによって骨髄細胞からのCCL17を受け取った傷害細胞は増殖能を回復し、またアポトーシスを起こす表皮細胞も減少した。この現象を前年度vitroで検証した。今年度はこれをvivoで検証するため、CCR4ノックアウトマウスに放射線照射 をし、野生型の骨髄細胞を移植したマウスを作成した(以下、B6>CCR4KOと呼称する)。対照群は野生型マウスに放射線照射 をした後、別の野生型マウスから骨髄を移植したマウスとした(B6>B6と呼称する)。B6>CCR4KOは、2ヶ月経過しても水分蒸散量がB6>B6と比べ有意に上昇していた。またBiotinを皮下注射し、その追跡を行ったところ、B6>B6では真皮までにBiotin色素が止まっているのに対し、B6>CCR4KOではepidermis-dermis junctionを越えて表皮にまでBiotin色素が浸潤していた。この2つの実験により、B6>CCR4KOでは放射線照射 により、傷害されたバリア機能が回復していないことが示された。すなわち、放射線照射 によって傷害された表皮に骨髄由来細胞が遊走しても、CCR4を欠いた表皮細胞は骨髄細胞からのCCL17を受け取ることができず、それによってバリア機能を回復できないことがわかった。つまり、CCl17-CCR4 axisは傷害された表皮細胞が機能回復をする際に必要不可欠なシグナルであることが証明された。
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