研究課題/領域番号 |
17K11539
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
陶山 淑子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (90448192)
|
研究分担者 |
八木 俊路朗 鳥取大学, 医学部附属病院, 准教授 (00378192)
福岡 晃平 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (40548781)
久留 一郎 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211504)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 皮下脂肪組織由来幹細胞 / 乳房再建 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
本研究では、皮下脂肪組織由来幹細胞(ASCs)を用い、乳房再建モデルマウスにおいて、移植脂肪の生着率を改善させるため、ASCsの投与方法の検討とASCs作用メカニズムの解明を目的とした。 ASCsは、8 週齢のラットから採取した皮下脂肪を細断し、酵素処理によりASCs を単離した。その非培養ASCs(1×10^6 cells)と皮下脂肪(1ml)を混合し、8 週齢の免疫不全マウス(BALB-c nu/nu)の両側背部に皮下注し、擬似乳房マウスを作製した。ASCs初回単回投与群と、ASCsを追加投与するブースト投与群における脂肪生着率の比較のため、ブースト投与の最適期間を検討した。ELucを発現したトランスジェニックラット(Tg ラット)から採取したASCsを用い、前述の方法で乳房再建モデルマウスを作製した。移植直後にin vivo imaging 解析を行うと、ELuc の発光を確認し、移植細胞の局在を観察した。ASCsは他臓器に移行せず、移植部位に限局し、約2 週間で消失することを確認した。これにより、ASCsブースト投与間隔は2週間と設定した。乳房再建モデルマウスにおけるブースト効果検討に先立ち、ブースト投与が組織血流に寄与するか下肢虚血モデルマウスを用いてASCsブースト投与の効果を検討した。8 週齢の免疫不全マウス(BALB-c nu/nu)の片側の大腿動脈起始部を結紮し、下肢虚血モデルマウスを作製した。Lewisラットから採取したASCsを1虚血下肢あたり1×10^6 cells筋注し、単回投与群(n=3)と2週間・4週間目にブースト投与群(n=3)でレーザードップラーを用いた血流回復率、CD31染色による筋肉内毛細血管数の評価を行った。2群間で有意差は認めなかったが、いずれの評価でもブースト投与群が血管新生、血流回復に効果があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度は、ELucおよびGFPを発現したトランスジェニックラット(Tg ラット)由来のASCsを用いて、乳房再建モデルマウスへのASCsブースト投与の効果検証を行う計画であった。 Tgラットは樹立できており、in vivo imaging、移植後の細胞局在の評価は可能な状況である。乳房再建モデルマウスは、基準とする脂肪とASCsの混合量、生着率がよく、線維化が少ない細胞比率と投与量を検討したが、移植脂肪の生着や脂肪融解、線維化に個体差があり、ブースト効果による脂肪生着に寄与する血流改善を評価するには、より安定した乳房再建モデルの作製が必要と考えられた。また、ブースト投与の際に、擬似乳房内の投与箇所についても検討が必要であり、擬似乳房へのブースト投与に至っていない。そのため、別系統の実験系をたちあげ、ASCsのブースト投与の血流改善効果を評価するため、下肢虚血モデルマウスを作製し、虚血筋肉へのASCsブースト投与を行った。この実験系で、血流改善効果が示唆されており、乳房モデルでの評価はまだ行えていないが、本研究の基盤となるブースト投与の効果の方向付けはできていると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、ヒトにおける臨床研究における課題であったASCsと脂肪の混合移植による乳房再建術の脂肪の生着率を向上させる移植方法の確立と、作用メカニズムの解明、安全性の検証である。乳房再建モデルマウスの再調整として、移植脂肪量の減量、注入方法など再検討し、乳房再建モデルマウスを完成させる。それと並行し、下肢虚血モデルマウスにおけるASCsブースト投与の効果の証明を行い、作製した乳房再建マウスにおける脂肪生着へASCsブースト投与が与える影響について検証する。さらに、ASCsのサイトカインによる血管新生や炎症抑制効果、ASCs自身の分化能など、移植後のASCsの分化・作用についてELucおよびGFP発現トランスジェニックラット(Tgラット)由来ASCsを用いて、検証する。また、長期観察と安全性評価として、Tgラットを用いた乳房再建モデルマウスにおいて、in vivoイメージング解析を行い、移植ASCsの他臓器への流入が起こらないことを確認する。加えて、乳房再建モデルマウスの3ヶ月~1年の長期観察を行い、癌化の有無など安全性を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究成果報告、情報収集のための旅費が予定額より少なかったため。また、研究補助およびデータ解析の人員を本年度は雇用しなかったため。 (使用計画) 29年度は、下肢虚血モデルにおけるASCsブースト投与の有用性を示したが、30年度には、乳房擬似モデルでのブースト投与の効果、Tgラット細胞を用いたASCsの作用メカニズムの解析に試薬等物品費、動物購入に経費を要するため、次年度使用額を一部物品費・その他に利用することを計画している。
|