研究課題/領域番号 |
17K11542
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
亀田 健治 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (60363264)
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研究分担者 |
村上 正基 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20278302)
森 秀樹 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (60325389)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 三次元培養 / エクリン汗腺 / 皮膚再生医療 |
研究実績の概要 |
我々の研究目的は、三次元培養皮膚内にエクリン汗腺の構築(表皮内汗管、真皮内汗管、真皮内汗腺分泌部)を最終目的とする。今現在、三次元培養皮膚内での付属器の再生には至っておらず、今後マウスモデルに代わる実験モデルを目指す上で、表皮及び真皮内に付属器(汗腺、毛包、脂腺)を再現することは非常に重要な課題である。 エクリン汗腺由来細胞(NCL-SG3細胞、臨床材料より分離した真皮内汗管細胞・腺房細胞)が幹細胞としての増殖能力を有しているかについて明らかにする。また、角化細胞、脂肪細胞、骨分化誘導培地などに変更し、多分化能を有するかについて検討する。分離培養された真皮内汗管細胞・腺房細胞を長期間培養し、その培養条件を適切な時期に変更し、さらに細胞成長因子などを添加する方法や、conditioned mediumを用いる方法、さらには角化細胞あるいは線維芽細胞との供培養の系を用いることで表皮内汗管、真皮内汗管へ分化誘導する系を確立する。これら汗腺細胞とI型コラーゲンゲルを用いて真皮成分の再構築を行い、真皮内で汗管・腺房への分化を誘導できるか検討する。作成された培養皮膚が正常皮膚とどの程度近似しているかについては形態学的、免疫組織学的な確認を試みた。 平成29年度は、次の2つの項目について検討した。(1)臨床検体からの真皮内導管細胞・腺房細胞の分離培養 (2)エクリン汗腺由来細胞の性質の検討、である。 Biedermannらの手法を基づき、手術時に得られた真皮内汗管細胞・腺房細胞から分離培養を試みた。そして、エクリン汗腺由来細胞をそれぞれ培養し、分子生物学的および免疫学的検討(ELISA法、micro array解析、real-time PCR法など)を用いて検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)臨床検体からの真皮内導管細胞・腺房細胞の分離培養 Biedermannらの手法を基に手術時に得られた真皮内汗管細胞・腺房細胞を生理食塩水にて洗浄し、ハサミやメスを用いて細切する。滅菌三角フラスコに移し、0.1%コラゲナーゼ/ダルベッコ変法MEM培地を注入し、37℃にて60-90分反応させる。この際に時々撹拌し、コラゲナーゼが十分に作用するようにする。反応液を遠心管に移し、1000回転にて5分間遠心する。上清を除去し細胞を10%FCS添加DMEMにて懸濁しシャーレに播種、37℃5%CO2にて培養をする。付着した細胞が増殖しコンフルエントとなった時点で継代を繰り返し、適宜凍結保存した。コラゲナーゼの反応の条件など、ほぼ条件が確立しつつある。 (2)エクリン汗腺由来細胞の性質の検討 エクリン汗腺由来細胞をそれぞれ培養し、経時的に培養上清を回収する。培養上清中のサイトカイン・細胞成長因子についてELISA法を用いて、解析している。さらに真皮内汗管細胞に対して増殖促進、抑制する因子を数種類選び(bFGF, TGF-beta, PDGFなど)、培養液に添加し、刺激後のサイトカイン・細胞成長因子についてもELISA法を用いて解析する。サイトカイン・細胞成長因子刺激後経時的にRNAを回収し、主にサイトカイン・細胞成長因子の遺伝子発現についてmicro array解析、real-time PCR法にて比較検討する。今現在、サンプル回収を行ない、解析を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究期間内での主たる目標は、表皮内での表皮内汗管の構築を試みることである。そのためには、二次元培養系においてNCL-SG3細胞による汗管(導管)構造への分化誘導を試み、最適の増殖培養環境について培養液や添加因子、さらには培養条件を検討し、その培養法を確立しなくてはならない。具体的には継代操作による細胞増殖能の検討、培養上清中に分泌されるサイトカイン、細胞成長因子の測定、サイトカイン、細胞成長因子刺激時の遺伝子発現などを指標とする。この結果を踏まえて臨床検体より得られたエクリン汗腺細胞を用いた同様の検討を行い、二次元培養系における汗管構造の構築を試みる。そして、二次元培養系での汗管構造の構築に成功したのち、LSE内(表皮内)での汗管構造構築を試みる。この時にNCL-SG3細胞及びエクリン汗腺細胞(真皮内導管細胞・腺房細胞)を用いて、I型コラーゲンゲル内に包埋培養を行い、これをLSE内に挿入し腺管形成の誘導を試みる必要がある。 平成29年度は、おもに臨床検体からの真皮内導管細胞・腺房細胞の分離培養とエクリン汗腺由来細胞の性質の検討を行なった。今後。三次元培養皮膚モデルの作成を目指すためには、臨床検体からの真皮内導管細胞・腺房細胞の分離培養の条件を確立し、安定的に細胞を培養出来ることが必須である。そのためには、培養されたエクリン汗腺由来細胞の増殖促進、抑制する因子(bFGF, TGF-beta, PDGFなど)の解析、刺激後のサイトカイン・細胞成長因子についてもELISA法を用いて解析、micro array解析やeal-time PCR法解析は重要である。次年度は、これらについて詳細に解析する必要があると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
エクリン汗腺由来細胞の性質の検討において、ELISA法によるサイトカイン・細胞成長因子の測定、ELISA法による増殖促進、抑制する因子の測定、micro array解析、real-time PCR法など、今現在、継続中である。そのため生じた額は、次年度必要となる。
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