研究課題/領域番号 |
17K11547
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 智也 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10445132)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 皮膚潰瘍 / 創部感染 / 細菌 / 細胞増殖 / 術後感染 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は①創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響を組織学的に検証すること。②創傷の細菌量を迅速診断できる機器を開発することの2点である。本年度は、まず昨年度に引き続き①創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響について病理組織学的所見を用いて検討した。具体的な手順は下記の通りである。肉眼的に感染やCritical colonizationを疑う臨床所見のない褥瘡で、皮弁手術の適応となった患者を対象とした。事前に書面で同意を得た。まず全身麻酔後に創部を生理食塩水で洗浄した。その後4mmパンチで肉芽組織を2検体採取した。1つは定量培養に用い、もう一つは組織学的評 価に用いた。検体の質量を無菌的に計測し、1mlの生理食塩水を加えテンブロック型ホモジナイザーで処理した。液状になった検体を定量白金耳で細菌培養用の 培地に播種する。組織の細菌量(CFU/g)は以下の計算式で算出した。 細菌量(CFU/g) = (培地上の細菌コロニー数) × 100 × (検体の質量 + 1.0) / 検体の質量 Ki67陽性率は組織中の細菌量と負の相関があることを明らかにした。また細菌種ごとに比較すると黄色ブドウ球菌、コリネバクテリウム属の細菌量とKi67陽性率の間に負の相関があった。さらに平成30年度は前年度に引き続きDEPIM法による迅速細菌定量法の確率に向けた研究を行った。これまでに20検体以上のデータが採取されているが、測定誤差がやや多いためこれをいかに少なくしていくかが本年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究でKi67陽性率は組織中の細菌量と負の相関があり、また細菌種ごとに比較すると黄色ブドウ球菌、コリネバクテリウム属の細菌量とKi67陽性率の間に負の相関があることを明らかにした。これらの結果を論文化し、Wound repair and regenerationに投稿し受理された。現在もう一つの研究目的である創傷の細菌量を迅速診断できる機器の開発に向け、試薬等を購入しデータ採取を進めている。研究は当初の予定よりもかなり速いペースで進んでいる。以上のことから研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は前年度に引き続きDEPIM法による迅速細菌定量法の確立を目標とする。概要は以下の通りである。 ①DEPIM法に用いる検体採取 Levineらの方法により1×1㎝の範囲を培養用の綿棒でぬぐい細菌を採取する。(Levine NS, et al.J Trauma. 1976 ;16(2):89-94.)。DEPIM法を用いて細菌によるインピーダンスの変化を計測する。 ②定量培養法 平成29年と同様の方法で定量培養を行う。 ③横軸に細菌量、縦軸にインピーダンスをとり散布図を作成する。両者の値について単回帰分析を行い、インピーダンスから細菌量を推定する回帰式を求める。統計解析にはSPSS Ver24.を使用する。さらに回帰式の妥当性を検証する。平成31年度も上記の方法でデータ採取を進め、十分な解析ができるに値するデータが集まり次第統計解析を行う。そして新たに得られた回帰式を基にDEPIM法測定装置を改良し、綿棒の検体から細菌量を定量する装置を完成させる。現時点の問題点としては検体の採取方法にばらつきがあり、ここをいかに一定にするかという点である。この問題を解決すべく、創部に当てる綿棒の圧を一定にする、検体を採取する面積を測定し、検体毎のばらつきをなくすなどの試みを行っている。その結果前年度と比較し検体間のばらつきは減少しているが、さらに正確に測定が行えるよう本年度も検体採取の手技を適宜調整していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
DEPIM測定装置調整にかかる委託費が予定よりもかかると予想されたため、本年度購入予定であった各種試薬、およびDEPIM法測定装置を既存のもので対応し、予算を次年度に回すこととした。
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