研究課題/領域番号 |
17K11549
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
矢野 智之 公益財団法人がん研究会, 有明病院 形成外科, 部長 (40537304)
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研究分担者 |
荒船 龍彦 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (50376597)
鷲尾 利克 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (40358370)
水野 博司 順天堂大学, 医学部, 教授 (80343606)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 特許成立 |
研究実績の概要 |
本年度は主に2つの実績をあげている。 1つ目が、院内倫理審査を通過した後に実際の患者さんで同意が取れた方のデータ採取の実際である。6名の患者さんにて実施し、いずれも研究の遂行、手術の遂行上問題なく行なうことができた。本研究は左右の乳房形態の差分を計算し、ボリュームの多い少ないを色調のグラデーションとして表示する方法である。左右の形状差分を体表に投影するのであるが、その色調パターンの選択で外科医の視認のしやすさがかなり異なることが分かった。さらに投影画像と体表の位置を合わせるために立体的な基準マーカーを4点体表に置いていたが、これが投影画像上のアーティファクトとしてでてしまうことも問題点として明らかになってきた。これに対しては、新たな位置合わせの手法が検討され、2021年度の検討課題となっている。 それ以外の測定手技や測定時間、差分情報、投影画像のプログラム処理時間、精度については大きな問題を認めなかった。 こうした一連の結果や明らかになった問題点は形成外科系では日本形成外科学会総会、日本形成外科学会基礎学術集会にて報告し、工学系の学会として日本生体医工学会大会、日本コンピューター外科学会大会、ライフサポート学会フロンティア講演会、日本生体医工学会関東支部若手研究発表会において報告を行なった。これら全6件の学会報告となった。 2つ目の実績が特許の成立である。すでに本研究は特許出願を行なっていたものであり、今回共同研究者の東京電機大学荒船、中野と共同発明という形で本研究が「身体マップ作成方法、身体マップ作成プログラム及びその記録媒体」(特許番号6791482号)として2020年11月に特許が成立した。こちらはアイデアの事前検討研究段階にて特許申請(2016年)しているために、特許欄には記入できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回院内倫理委員会も通過し、無事に臨床の現場において研究が進み始めたが、新型コロナウイルス感染症の影響で、共同研究者が院内に入れなくなってしまったという問題があげられた。また本研究は前向き介入研究として行なっているが、コロナウイルス感染症の影響で、手術中にこうした研究計測などの追加操作がしにくくなってしまった。その結果、本研究の予定調査数としては10-15名程度を考えていたが、6名にとどまってしまったという点がある。しかし6名という実施数においても、システムの仕様要件として十分に将来の臨床利用にて十分である点(計測時間、差分情報の計算時間、投影画像の作成時間、投影時間など)と、まだ未解決である点(投影画像と身体を一致させる位置合わせの手法の問題、投影時の手ブレや不安定さの解決)が明らかになったため、「おおむね順調に進んでいる」という判断とした。 一方で、成果の発表については、昨年度は学会報告の面からは6件の国内学会での報告と、十分な成果があげられた。海外学会での報告はオンライン化や中止などの影響で全く行なえなかった。今後は和文誌もしくは英文誌などでの投稿が2021年度の課題としてあげられる。また特許の成立は非常に大きな進捗点であり、今後の研究方針にとって、強いアドバンテージになったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は恐らくは夏から秋にかけてワクチン接種が進み新型コロナウイルス感染症が落ち着いてくることが期待されるため、共同研究者の来院が再度可能になる見込みである。共同研究者の来院が可能となった時点で、予定症例数である10-15例に達するように追加でデータ採取を行なう予定である。症例数10を越えてくると英文論文としての投稿が行ないやすくなるために、少なくとも症例数は4例追加し、その後得られたデータをまとめて英文論文とする。また症例数が10を超えた段階で、今度は前向きの介入研究として、特定臨床研究にのっとる形で追加の試験を行なう予定である。 その際に併せて、新たに考案している投影画像と患者体表面を一致させる体表マーカーを用いない位置合わせの手法についても実施する。その際に可能であれば、本研究のシステムを簡易的な筐体に載せることで、測定の安定、投影時の手ブレの軽減、将来的な臨床使用用のパッケージ化を目指す。このようにパッケージ化することで、今後の測定時間の短縮、測定手技の簡易化が実現すると思われる。 最終的には、成立した特許、英文論文のアクセプト、本研究システムを筐体に搭載した形でパッケージ化し、今後は医療機器開発のほうへ向けた共同開発企業へのプレゼンといった方向も推進させてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナウイルス感染症により、臨床における実施途中で、共同研究者が来院できなくなるという事態が長く発生していました。そのために、まず予備実験として行なっていた実臨床での試験が6件で止まってしまい、予定件数の10-15件に届かなかった。本来は、この件数に届いた時点で、特定臨床研究法にのっとって、前向き介入研究を次のステップとして行なう予定であった。当院には特定臨床研究にのっとった研究を審査する委員会がないために、これを院外に委託する予定であった。そのために、予算を残していたが、これが新型コロナウイルス感染症で使う事なく昨年度が終了してしまった。また英文論文のための英文校正費用、ジャーナルの種類によっては投稿費用にあてる予定であったものも、使えずに終了してしまった。
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