2019年度までにBasic fibroblast growth factor (bFGF)による瘢痕抑制効果としてbFGF誘導性のmicroRNA 146b-5p(miRNA 146b-5p)が関与している可能性を示した。この瘢痕抑制はmiRNA146b-5pがPlatelet-derived growth factor receptorα (PDGFRα)を標的としてPDGFRαの発現を抑制することを想定し、miRNA 146b-5pの標的分子がPDGFRαであることをluciferase reporter assay からin vitroで証明した。さらに、2重染色によるmiRNAと標的分子の可視化解析を行い、PDGFRαとmiRNA146b-5pの共発現がないことから両分子の標的関係についてin vivoで証明した。2019年度はmiRNA146b-5pのMesenchymal stem cell (MSC)に対する影響をin vivoで検討した。創傷部の潰瘍組織におけるMSCを含むPDGFRα+/Sca-1+細胞の発現性を2重染色から解析した。その結果、bFGFを投与した創部ではPDGFRα+/Sca-1+細胞が有意に減少し、逆にmiR146b-5p+/Sca-1+細胞は増加していた。これらからmiRNA146b-5pがPDGFRα+/Sca-1+細胞のPDGFRαを標的として、その発現抑制をする可能性が示唆された。 以上の結果から、bFGFはmiRNA146b-5pを誘導し、その標的PDGFRαを発現するMSCを含めた間葉系細胞におけるPDGFRα発現を抑制することで間葉系の未分化な細胞から線維芽細胞への分化および増殖を制御し、線維化抑制を誘導することが推察された。
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