研究課題/領域番号 |
17K11556
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
仲沢 弘明 日本大学, 医学部, 教授 (60180270)
|
研究分担者 |
副島 一孝 日本大学, 医学部, 准教授 (00246589)
樫村 勉 日本大学, 医学部, 准教授 (20570740)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
日だい 智明 日本大学, 医学部, 教授 (70228732)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 線維増殖性疾患 / ケロイド / 被膜 / 凝固因子 / 第9凝固因子由来上皮成長因子 / 脱分化脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
ケロイドや肥厚性瘢痕は、膠原線維の異常な増殖が組織学的な特徴である。異物に対する被膜も良性線維増殖性病変として類縁疾患と考えることができ、前年度に引き続き以下の実験を行った。 ラットを用いた異物に対する被膜形成を利用し、脱分化脂肪細胞(DFAT)による予防および治療効果について検討を行った。前年度は、ラットの背部にシリコンシートを埋入と第Ⅸ凝固因子由来上皮成長因子(EGF-F9)を投与し検討した。その結果、EGF-F9により被膜形成の予防効果が得られることを明らかにした。令和元年度は、インプラントの挿入と同時に挿入部の表層にDFATを5000cells/回/週を投与する予防投与群と4週間挿入し被膜を形成した後に同様にDFATを4週間かけて投与する治療投与群を作成した。予防投与群ではシリコンシートの挿入後4週間、治療投与群では挿入後8週間で組織採取を行い評価した。結果、予防投与群で180.7±63.6μm、治療投与群で167.2±42.9μmの厚さの被膜がインプラントの周囲に形成された。前年度の実験の対照群と比較すると、治療投与群で有意に薄い被膜が形成されていた。しかしながら、予防投与群で被膜の厚さを薄くする効果は認めなかった。また、alpha smooth muscle actinの発現は、治療投与群で有意に少なかった。DFATには、線維増殖性疾患に対して、病態完成された後に一定の治療効果があるものの、予防効果は乏しいことが示唆された。 これは、これまでに得られたEGF-F9とは対称的な結果となった。 令和2年度にヒトケロイド由来の組織を実験で使用予定である。平成30年度には、手術中に採取したヒトケロイド組織の研究利用のため、当施設の臨床研究倫理審査委員会での承認を受け、組織提供患者のエントリーを開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
第Ⅸ凝固因子由来上皮成長因子(EGF-F9)および脱分化脂肪細胞(DFAT)により線維増殖性疾患のモデルを用いて検討を行ってきた。線維増殖性疾患に対して、EGF-F9では予防効果を有すること、DFATでは治療効果が得られることが動物実験の基礎データより示唆された。その後、ケロイドに関する検討を計画していた。ケロイドは、動物実験での再現が困難であり、ヒトからの組織の提供が必要となる。平成30年から当施設の臨床研究倫理審査委員会の承認を受け、提供患者の登録を開始した。しかしながら、これまでに提供患者がなかったため、研究期間の延長を行った。現在、ケロイド組織の提供予定があるため、令和2年度には実験および検討が可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2つの検討を予定している。これらによりケロイド・肥厚性瘢痕に代表される皮膚軟部組織の良性線維増殖性疾患の新しい治療法の開発の基礎データの蓄積を予定している。 1.インプラント挿入モデルの検討 令和元年度までに、第Ⅸ凝固因子由来上皮成長因子(EGF-F9)は線維増殖性疾患に対して予防効果を有し、脱分化脂肪細胞(DFAT)では治療効果を有することが示唆された。今後は、これらのデータの解析ならびに追加の実験を行う予定である。データ解析については、alpha smooth muscle actinやコラーゲンなどの免疫染色による組織学的検討を予定している。追加実験については、対照群のデータの一部が不足しているため実験を行う予定である。 2.ヒトケロイド組織を用いた実験 ケロイドは、動物実験での再現が困難であるため、ヒトからの組織の提供が必要となる。ケロイド患者の切除手術の際に得られた切除検体の一部を使用するため、臨床研究倫理審査委員会の審査と承認を受けた。手術検体の提供に関して協力者のエントリーを開始している。実験は、以下のプロトコールを予定している。ケロイド手術患者より提供された組織を免疫不全マウスの背部に移植する。移植と同時にPhosphate-buffered salineを投与する対照群とEGF-F9もしくはDFATを投与する治療群を作成する。移植後4週間で、ケロイド組織を摘出しそれぞれの投与効果につき検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度までにヒトケロイド組織を用いた実験を予定していた。しかしながら、組織提供に同意された手術症例がなく実験の遂行が困難であった。そのため実験期間を延長し、次年度使用額を生じた。 令和2年度には、1.インプラント挿入モデルの解析と追加実験2.ヒトケロイド組織を用いた実験を予定している。さらに、これらの実験などにより得られたデータを学会ならびに論文での発表を予定している。 それぞれで、実験動物の購入、病理組織学的検討、成果発表に次年度使用額を使用する予定である。
|